〈令和3年10月の需給展望 牛肉〉外食・観光需要の回復期待も、牛肉への恩恵は限定的か

〈和牛・交雑の相場上げ要因乏しく、ホルスは高値推移〉
先月は緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が全面解除されたとはいえ、飲食店の時短営業や酒類提供の制限が続いたこともあり、牛肉需要としては目に見えるような好転はみられなかった。末端も在庫を抱えてきた関係もあり、飲食店の時短営業などの制限が全面解除された下旬になって徐々にロースやヒレなどの荷動きが出てきたといった状態だ。

一方で、小売り需要は依然として冴えず、和牛・交雑は安価な小間材やスネなどは動くものの、モモやカタロースなどは弱い。輸入牛もコスト高でフェースも縮小気味で、専ら動いているのはホルスの切り落としや輸入原料の味付け肉などの安価な商品が中心のようだ。

コロナ以前、11月は消費が中だるみとなる半面、相場は年末需要に向けた枝肉の手当てで前月よりも値上がりし、堅調に推移する流れとなる。外食や観光需要の回復が期待されるとはいえ、消費者の生活防衛意識の高まり、接待の自粛で和牛高級物を扱う都心部の飲食店は厳しい環境が続くなど、業態によって温度差がみられると予想する。さらに前年は、「和牛肉保管在庫支援緊急対策事業」に伴う枝肉の手当てや政府のGoToキャンペーン効果、海外輸出の回復で枝肉相場は大きく上昇し、和牛の4等級以下は2019年の相場を超える結果となった。ただ、ことしは外食・小売ともに前年相場を押し上げるほどの力はなく、和牛去勢A5等級で2,750円、和牛去勢4等級で2,450円前後、3等級で2,200前後の展開と予想。交雑は弱含みで、供給不足のホルスは強気の展開となりそうだ。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、11月の成牛出荷頭数は和牛が前年同月比3.9%減の5万1,300頭、交雑種が前年同月比6.2%増の2万3,300頭、乳用種が前年同月比0.2%減の2万8,400頭としている。輸入品はチルドが前年同月比7.8%減の1万9,900tとなる見通しだ。

家畜改良センターの個体識別情報によると、11月に出荷適齢期を迎える交雑種の飼養頭数は前年よりも5%程度多く、前述の保管事業の対象外であることと、ホルスと輸入品が供給不足・コスト高にあることが、今後の相場・引合いにどのように影響するか注目されるところだ。

〈需要見通し〉
制限解除の影響で西日本から先行して末端需要は回復傾向にあり、ホルスのロースやヒレも動き出している。ロースについて、関西では和牛の動きも改善しているが、単価は「いまの枝相場に見合っていない」(関西の卸筋)という。全体的には在庫圧迫という最悪期からは脱したものの、専ら動いているのはホルスの切り落としや、煮込み系のスネなどで、カタロースはイマイチという状況にある。スーパーの切り落としで使用される和牛・交雑のモモは依然として動きが鈍く、小売関係の需要の弱さが伺える。

外食も忘年会や接待の自粛で高級和牛の需要は厳しい状況だ。今後、年末に向けた仕込みが本格化するが、末端サイドも凍結玉を抱えている半面、輸入品のコスト高もあり、年末時期の切り落とし用などにホルスを扱う動きもあり、畜種や銘柄によって温度差が出てくる可能性がある。

〈価格見通し〉
2020年は保管事業の手当ての関係で、和牛4等級でも前半は2,500円台を付ける展開となった。2021年は問屋筋もかなり慎重で、バラシ易い枝や一部銘柄、ホルス以外は全体的に横ばいがらみと予想される。月間平均では(東京市場)、和去5等級が2,750円前後、4等級で2,450円前後、3等級2,200前後、交雑去B3で1,550円前後、同2等級で1,350円前後、乳去B2は1,060円前後と予想される。

〈畜産日報2021年11月8日付〉