カマンベールチーズ市場拡大へ 供給体制整う 購入経験率は16%、間口拡大の余地あり

食べやすい国産品、値頃感がある一部輸入品、両方とも店頭回転率は今も高い
〈16年度「認知症予防効果」紹介きっかけに爆発的ヒット、17年度5800トン規模〉
カマンベールチーズ市場が18年度さらに拡大する。認知症予防効果がテレビで紹介され爆発的に売れた16年度、17年度もテレビで数回取り上げられ市場がさらに拡大し、本紙推計で約5800t規模となった。

18年度は明治が約90億円を投じ北海道・十勝工場敷地内に建設したカマンべール新工場が7月に稼働、8月から順次製品出荷、これまで需要急増で出荷調整しなくてはならない場面もあったが、供給体制が整うことからさらに市場拡大が進む見込みだ。

「カマンベールは間口が狭い商品の一つで、チーズユーザーの購入経験率が16%、まだ買ってない人が84%いる。スライスチーズは食べている人が6割、食べていない人が4割、ベビーチーズも同様の傾向で、こうしたデータからも間口を広げる余地のあるカテゴリー、市場拡大の機会があると見ている」(明治)

間口拡大に向けた今後のターゲットは若年層。カマンベールは、国産チーズの中でも価格が高めの部類であることもあって、メーンユーザーは40代、認知症予防効果の報道で50代が急激に増えたが、今後の間口拡大には20、30代の若年層の取り込みが課題となる。明治はメーンの40代向けと、20、30代向けにマーケティング戦略を明確に分け、両方の取り込みを進めていく。「秋はリニューアル(値上げ)もあり、試食販売を積極的に行い、手にとってもらえる環境を作っていく」(同)。

〈直接食べている層が85%、今後は料理への使い方も発信〉
また食べ方の啓蒙と広がりも、間口拡大のキーワードの一つ。現在は直接食べている層が85%で、そのまま食べるチーズとして定着し、その食べ方が今後も大半となるが、認知症予防報道後にカマンベール初心者がユーザーに加わったことで、乳業メーカーに「白カビは食べられるのか」「食べ方が分からない」などの声が寄せられており、初心者にも分かりやすい食べ方の啓蒙も必要になってきている。

明治はリニューアル後の、ホールタイプのパッケージに、ナイフのようなものでカマンベールを切る写真を掲載、盛り付け例とし、初心者にも扱い方が分かりやすいよう工夫した。食べ方の広がりには、耐熱性陶器に他の食材と入れて加熱する「ココットカマン」のプロモーションに、数年前から注力。「引き続き食べ方をPRしていく。料理にも使うようになれば、間口、奥行きが広がる」と、年間通じて「ココットカマン」を展開する計画だ。

若年層の取り込みと、食べ方の普及、広がりで、間口拡大が進み、カマンベール市場が今後も大きく成長するのか、下期以降の動きに関心が集まる。

なお、需要急増で乳業メーカーが出荷調整に追われていた時期、この空いた棚を補ったのが輸入のロングライフ(長期保存可能)のカマンベール。実勢売価300円台の乳業大手の国産カマンベールに対し、常時200円台で販売されているデンマーク産の商品もあり、17年は国内市場に大量に出回り、カマンベール初心者も食べたと思われる。

販売する商社にとって、空輸の高級カマンベールと違い、特段手をかけて市場で育成していく位置づけの商材でもなく、ユーザーへのフォローはほぼ皆無の状況。カマンベール初心者をコアなユーザーに引き上げるには、この購入者のフォローや、消費者目線に立ち、食べ残ったものをどうアレンジしたらよいのかを伝えることも大切であり、輸入、国産問わず初心者にも分かりやすいカマンベールの啓蒙が重要になりそうだ。

〈食品産業新聞 2018年7月19日付より〉