江崎グリコは、乳児用液体ミルクの製品化を実現し、厚労省の承認などを経て、来年春からの販売開始を目指す。このほど都内で開催した液体ミルクメディアセミナーで発表したもの。紙パック入り125mlで委託生産先は非公開(来春には公開)、価格は未定(海外で販売の液体ミルクは粉ミルクの2~3倍が相場)、保存期間は常温で6カ月。馴染みのある紙パック入りで災害備蓄用だけでなく日常使いも促し、授乳期における育児の負担軽減にもつなげて、日本市場に定着させていく。液体ミルクの発売は国内初。

液体ミルクの開発は、16年4月の熊本地震でフィンランドからの支援物資として液体ミルクが届けられ、その必要性が社会的にも注目されたことを受け着手。子会社が製造する粉ミルク「アイクレオのバランスミルク」と同様の母乳を目指した栄養成分、常温保存6カ月の賞味期限の製品設計に取り組み、紙パック容器も、中身保護の用途別に6層の構造の高いバリア性にこだわった。

「開発で苦労したことは、省令下による規格基準が定まらない中での配合処方の検討。微生物の無菌化されていること、保存期間中も無菌のままであることを十数回の工場テストで検証した」(マーケティング本部商品開発研究所乳業グループリーダー・永富宏氏)。

そんな中、今年8月、液体ミルクの制度改正により、日本でも液体ミルクの製造・販売が解禁。環境が整ったことで、国内初の発売に向け大きく前進する格好となった。「今年7月行った、授乳中の子を持つ人1000人への調査では、液体ミルクに対する認知度は約3割だったが、製品情報を知った後の使用意向は5割以上という結果に。10月に再度行った調査では、災害時に使用できるという認知が広がったことなどを背景に、認知は5.7ポイントアップ、使用意向は2.7%アップした」(同社コーポレートコミュニケーション部)。

紙パックを採用したのは、液体ミルクが普及しているヨーロッパでは紙容器が最大の市場であり、世界的にも約7割が紙容器であること、また日本では日常使い、日々の購入コスト面などから、飲みきり飲料などで馴染みが深く(使いやすく)、紙なので廃棄もしやすい(環境面)ことなどが理由だ。

一方、9月の北海道地震の際、被災地に支援物資として送られた液体ミルクが、ほとんど使われなかったという指摘もある。これについては、「液体ミルクとは何か、そしてその正しい使い方を周知していく必要がある。まずは自治体で災害用に備蓄してもらいながら、賞味期限の近くなった商品を保育園などに配布して、まずは1回使ってもらう(メリットを感じてもらう)ことで普及につなげていく」(マーケティング本部・水越由利子氏)。東京都文京区と連携し、災害用の備蓄品として提供することは先日発表済み。
江崎グリコ マーケティング本部・水越由利子氏

江崎グリコ マーケティング本部・水越由利子氏

なお液体ミルクは粉ミルクのようにお湯で溶かす必要がなく、温めずに乳児に飲ませられる常温保存の乳製品。欧米では広く普及している一方、日本では法律で製品の規格が定められていなかったが、相次ぐ自然災害で被災地での必要性が注目され、法整備が急速に進んだ。災害時の備蓄用としての必要性が転機となったわけだが、夜間の授乳など育児負担の軽減、日常的なニーズもあり、「夜中の授乳は父親の出番。液体ミルクの活用が期待される」(田中俊介大正大学心理社会学部准教授)として、家庭内備蓄としての需要も今後、表面化していきそうだ。
 
〈食品産業新聞 2018年12月6日付より〉