〈「脂肪0」「低脂肪」などの“引き算”より受け入れられる傾向に、食生活の乱れや高齢化が背景〉
乳業各社は今春、「ヨーグルトで栄養素を補給する」新たな習慣の提案に本格的に取り組む。これまではヨーグルトを食べる上で阻害要因となる脂肪を取り除く、引き算の発想の商品「脂肪0」「低脂肪」が消費者に受け入れられてきたが、今は栄養素を足す、足し算の発想の商品「鉄分入り」の方が受け入れられている傾向にあるからだ。

背景にあるのは食生活の乱れや高齢化の進行。鉄分入りは大手のロングセラー商品があり、味覚設計も難しいため参入は限られていたが、昨秋あたりから様々なタイプが出揃ってきたこと、また今春はメーンブランド商品で「食物繊維(イヌリン)」入りも登場することから、 “足し算商品”の展開が本格的に始まる。特定の栄養素の補給ニーズに対応することで、日本独特のヨーグルト文化を形成していくことができるのか、この春はまず「鉄分」「食物繊維」入りヨーグルトの動向に注目だ。

鉄分入りヨーグルトの代表格は、1996年頃発売の雪印メグミルク「プルーンFe1日分の鉄分のむヨーグルト」。健康志向が根付く前から、鉄分が不足しがちな女性に着目し、食事だけで摂るのは難しいというニーズを汲み取り商品設計、1本で1日分の鉄分がとれるコンセプト、分かりやすい商品名が女性に支持されロングセラーとなった。

そして飽食時代の「隠れ栄養失調」が叫ばれ始めた約5年前、3食食べていても、ビタミン・ミネラル・タンパク質などの不足でおこる栄養欠乏症状、低栄養が社会的に問題となり、食品各社の様々な健康素材・食品がテレビ番組で紹介されるたびに店頭で欠品騒動が起き、健康を維持したい、そのための栄養素を摂りたいニーズの高さが表面化、ここへいかに切り込んでいくかが各業界、各食品のテーマにもなりつつある。

ヨーグルトは整腸作用や感染症予防に加え、寿命延長、美肌など健康効果、エビデンスを各メーカーが長年かけて解明してきたことから、消費者にとって体に良い食品の位置づけ自体は変わってなく、そういう意味では既に土台がある。

今春の「食物繊維入り」の挑戦は、お通じに良いものとされる素材と、ビフィズス菌あるいは乳酸菌をセットで摂り、腸の働きを最大限に高める「シンバイオティクス」の考え方が根底にあり、栄養素の補給という観点のほかに、ヨーグルト固有の価値を打ち出せるかという点でも注目。「鉄分入り」についても、サプリメントでなくヨーグルトで摂ることのメリットを明らかにできれば、固有の価値を大きく高めることができる。

乳酸菌やビフィズス菌との相乗効果が期待できる素材、栄養素を改めて見つけ出し、商品展開していくこと、何か新しい手を打っていくことが、近年踊り場の約4000億円市場から脱却していくためには必要と思われ、この春の足し算の発想の商品の動向に関心と期待が集まる。

なお既存のヨーグルトで食物繊維入りは各社からサブブランドで販売されているが、乳酸菌などとの相乗効果の発信まで大きく踏み込んだ取り組みはほぼ皆無。このほか既存品で既に配合されている栄養素としては、ビタミンC、D、E、カルシウム、オリゴ糖などがあり、今後いかに価値を発信していくか各社の知恵比べに注目だ。