四国唯一の農協系乳業メーカー・四国乳業が体質改善で4年連続の黒字、“鮮度重視牛乳”や機能性ヨーグルト、地場の柑橘を使った製品開発に意欲

四国乳業が愛媛・東温市の本社工場で製造する「らくれん牛乳」「夕しぼり」
四国に本社を置く唯一の農協系乳業メーカーの四国乳業(愛媛県東温市)が、2015年から経営体質改善に乗り出し2018年度は4年連続の黒字、中小乳業の3割が赤字経営といわれる中で着実に体質改善を進めている。

製品では、地元のミカン果皮の機能成分に着目し愛媛大学と共同研究で作った「エヌプラスドリンクヨーグルト」、広島大学との共同研究による機能性表示食品「8020ヨーグルト」など、特徴ある製品作りに近年注力、現在も地元の柑橘、機能成分に着目した製品作りに取り組んでおり、高品質な県産牛乳・乳製品の製造に注力している。

「かつては(経営)が厳しい時期があった。県からの出資を受けている会社だが、県酪連とのなれあい関係を見直し、工場廃止やロスの見直し、徹底したコスト削減、充填機のスピードアップ、機能性ヨーグルトなど高品質な商品での売上拡大、地域との取り組み強化などで黒字化を果たした」(三好晶夫社長)。

四国乳業・三好晶夫社長

四国乳業・三好晶夫社長

四国乳業は1968年に国と愛媛県の出資を受け設立、生活協同組合コープえひめとルーツは一緒。県酪連会長と社長が兼任だったが、経営が悪化した2015年に当時愛媛県農林水産部長だった三好氏が招聘され社長に就任、経営体質改善に取り組んだ。現在は本社、京都の2工場で年間6万6000tの生乳を処理し、牛乳やヨーグルト、デザートなど約180品目を製造している。
 
主な商圏は四国4県と中国・関西全域、関東・九州の一部で、2018年度売上高は183億円、営業利益は8400万円。部門別構成比は牛乳類が60%、乳製品が30%、その他が9%。また、NB(ナショナルブランド=メーカーによるブランド)が55%、PB(プライベートブランド=小売・流通業者によるブランド)30%、OEM(original equipment manufacturing=受託生産)15%となっている。このうち本社工場では「らくれん牛乳」、全国農協乳業協会が定める規格“生乳鮮度重視牛乳”の全国第一号認定商品「夕しぼり」、愛媛県内の学乳(学校給食の牛乳)12万食などを製造する。

四国乳業 本社工場外観

四国乳業 本社工場外観

〈愛媛大学と共同研究で作った「エヌプラスドリンクヨーグルト」や機能性表示食品「8020ヨーグルト」も〉
四国乳業の特徴の一つである「産官学連携と商品開発力の高さ」を象徴する商品としては、「8020ヨーグルト」「エヌプラスドリンクヨーグルト」があり、2010年発売の「8020ヨーグルト」については、歯と歯ぐきの健康が気になる人向けのヨーグルトとして2016年にテレビ番組で紹介され、問い合わせ殺到し混乱。2018年に機能性表示食品としてリニューアルした後も2割程度売り上げが伸びたが、現在は徐々に落ちてきている。「知名度が浸透していないので、11月8日『いい歯の日』にからめてもっとアピールしていきたい」(三好社長)。
 
また、ミカン果皮に含まれるノビレチンに着目し2015年発売した「エヌプラスヨーグルト」は、アレルギーに悩む人たちから注目され、季節的に需要が高まる時期にじわじわと配荷を拡大中。こうした地場の柑橘の機能成分に着目した独自の製品開発に今後も取り組んでいく方向で、定期購入者獲得などによる安定した売上基盤の構築で、収益の強化につなげていく考えだ。

「8020ヨーグルト」「エヌプラスドリンクヨーグルト」

「8020ヨーグルト」「エヌプラスドリンクヨーグルト」