第12回「ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」に203品、北海道・長万部町の川瀬チーズ工房「フリル」に農林水産大臣賞

農林水産大臣賞を受賞した川瀬チーズ工房「フリル」
〈世界に通用するレベルの高さに注目〉
中央酪農会議は10月30日、都内で「第12回ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」最終審査を開催し、全国の86のチーズ生産者から出品された203作品の中から、北海道・長万部町の川瀬チーズ工房のハードチーズ「フリル」を農林水産大臣賞に選出した。

「ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」は2年に1度開催。この10年で工房数が倍以上に増え(現在300超)、今年の出品は過去最多となった。背景には、今年2月にEUとの経済連携協定(日欧EPA)が発効され、日本の工房チーズの国際競争力強化が急務となっていること、また3月にEUへ日本産乳製品を輸出することが可能となったことで、意欲ある生産者にとっては競争激化の中でも展望が開けてきた格好となり、今年は国の財政支援も加わり、大々的な開催となった。

審査はチェスコ技術顧問の田中穂積氏をはじめ、服部栄養専門学校の服部幸應氏、ラ・ベットラ・ダ・オチアイの落合務氏ら10人で実施し、外観・色調、組織、風味を総合的に審査し、上位4作品を決めた。

農水大臣賞受賞の「フリル」は、ハード熟成6カ月未満のチーズで、ミルクの風味も熟成度も味わえる飽きの来ないおいしさ、ジロールという削り器でフリル状にした時のふんわりと、まろやかな口当たりが高く評価。生産者の川瀬昭人さんは、チーズを作り始めたのが約2年前と製造歴はまだ浅いが、牧場を営む兄が搾る良質な牛のミルクを使い、丁寧なチーズ作りに日々研鑽を積んでおり、受賞に対し「家族や関係者に支えられここまでこれた。今後も良いチーズを作りたい」と、意欲を示した。伊東良孝農林水産副大臣による賞状授与には、子どもと一緒に登壇、チーズ工房の未来、業界の明るい展望を来場者に印象付けた。

「先日イタリアで開催のワールドチーズアワード(日本初出場)では、ベスト16に選ばれるチーズもあり、日本チーズの品質レベルの高さが世界で認められた。チーズの本場で勝負したい生産者を後押ししていくべく輸出環境の整備を進めていく」(伊東副大臣)。

なお、農畜産業振興機構理事長賞には、広島県の三良坂フロマージュのシェーヴル「じゅくし柿」、中央酪農会議会長賞には、北海道・足寄町のしあわせチーズ工房のウォッシュ「茂喜登牛(モキトウシ)」、審査員特別賞には、北海道・幕別町のNEEDSのハード熟成3カ月未満「ラクレット」を選んだ。いずれも日本の気候風土、日本人の嗜好にあった個性あるチーズで、生産量は限られるものの、販路拡大が進むことに期待がかかる。

伊東農水副大臣(左端)と川瀬さん親子

伊東農水副大臣(左端)と川瀬さん親子