日欧EPAで関税撤廃されたワインのお供に、欧州テーブルチーズを提案する動きが広がっている。流通大手が直接輸入する欧州テーブルチーズが以前より増えたことで、市場が活性化する一方、課題も浮上している。

輸入増加のメリットは、大量に取り引きできる現地のチーズメーカー、仕入れ価格を安く抑えられる流通大手、値頃感ある価格で購入できる消費者のそれぞれにあり、店頭で露出が広がることによる普及面でもプラス。ただ、ブームが過ぎ去り大量に売れ残ると現地メーカーにしわ寄せがいき、取り引き終了ともなれば、値段が一旦ついてしまっていることで他の商社が扱いたがらず、その商品が行き場を失い市場から姿を消すこともある。デメリットの究極は、これに懲りた現地メーカーが日本市場との取り引きを避けるようになり、良いチーズが日本に入らなくなってくることだ。

既に事例はある。また似たようなケースも多数ある。直近では、ある商社が何年も前から現地メーカーとやりとりし、パック不良を一緒に改良しながら少しずつ市場に広め、ようやく物量を拡大していける段階まできていたとき、現地メーカーが大量契約で揺らぎ流通大手と契約してしまい、同じ商品で価格差がついてしまったことがあった。

あるチーズ専門商社の社長は、「大手が大量に直輸入して安く売るのにはかなわない。ただ、販売先は欧州フェアで売るようなので、催事価格という考え方をして、これが広告塔、商品の知名度を上げていく通過点だと割り切り、現在の取引先の店舗で引き続き育成していく」とする。

日欧EPAで、チーズの関税は、ワインとは異なり段階的に引き下げられる。船便と空輸の違いで恩恵に差があるが、欧州ワインと生ハムやオリーブの実、チーズとの組み合わせ提案は各売り場で広がっており、欧州チーズにとっては追い風。日本のチーズ消費は伸びており、現地メーカー側も、関税の引き下げで、さらに売れることを見込んでいる。そこへオリンピック需要も加わることで期待値は高く、来年の食品展示会での来日を新たに決めているメーカーもある。関係各社には、一時的な売り上げを追うだけでなく、欧州チーズを息の長い商品に育てていくための取り組みが求められる。

なお、近年、日本市場に根付いた欧州チーズには、ラクレットやブルーチーズがある。

ラクレットはテレビ番組を機に人気に火が付き、これまで外食メニューが中心だったが、スライスタイプを商社と現地メーカーが開発し、使い勝手を高めたことで家庭の食卓にも普及した。ブルーチーズも、“血管年齢若返り”がテレビ番組で紹介されたことを機にブーム化。今は以前ほどの勢いはないが、日本向けに開発された個包装タイプは好調で、消費のベースは以前よりある程度上積みされて戻った格好となっている。

〈食品産業新聞 2019年12月16日号〉