アイス消費金額、金沢市が直近9年でトップ6回、マルチパックが売れる

アイス消費金額、金沢市が直近9年でトップ6回(画像はイメージ)
アイスクリームの消費(金額)は、石川県金沢市が全国トップだ。総務省 家計調査の2020年1〜12月の都市別1世帯当たり支出金額で1位(1万2655円)、2012年からの直近9年間で6回も1位となった。 

北陸という冷涼で雪の多い地域のイメージの金沢市が、なぜ1位なのか。隣接する富山県富山市も1位になったことが数回あり、支出金額が高い水準にある。 

そこで動き出したのが、国内のアイス企業が加盟する日本アイスクリーム協会(東京)。金沢1位の理由解明が長年の課題だった。

2018年、伝統的文化の継承を専門とする大学教授と縁があり、協会と同様に1位の理由を探していた金沢市役所からも調査情報がほしいと連絡があったことから、プロジェクトを立ち上げた。金沢の小売業や企業、20〜70代の地元住民約50人などの協力を得て調査が行われた。

まず着目したのは、金沢の歴史。文献調査等から、加賀百万石の経済力と文化政策、そしてその影響を受けた金沢商人の文化志向が、茶道と和菓子の文化を発達させ、さらに浄土真宗への熱心な信仰が行事とあわさって和菓子文化を普及させたことが関係していると分かった。江戸時代より続く甘いものへの強い嗜好が、アイス消費の多さの背景にあるようだ。

次に調査したのはアイス売場。金沢市はスーパーマーケットの数が多く、小売店間の競争が激しく、マルチパックを中心に、週に何度か4割、5割の割引率でのセールが多発している。販促実例は「箱アイス5個まで半額」「1000円以上買い上げで10個まで半額」「曜日特売(4割引き)」など。

事前調査の段階で、金沢市に展開するスーパーの担当者に、安売りや半額セールなどスーパー側の仕掛けがアイス喫食の習慣化につながったという話を聞いており、「これが(購入のきっかけの)一つの事実だと確認することができた」(日本アイスクリーム協会)。

アイスの形態別(1個売り、マルチパック)でみた場合はどうか。大前提として、金沢市民の家計事情と住宅事情がある。高収入・高支出の傾向を持つ世帯が比較的多く、広い家に住み冷蔵庫を複数台所有している家庭も少なくない。

食べるきっかけという調査において、全国平均統計では「気分転換したい時」「疲れた時」が多いのに対し、金沢では「家族団らんの時」が多い。これらを背景に形態別の購入意向の調査では、全国では「1個売り派」が多いのに対し、金沢では「マルチパック派」が多かった。

このほか他県と金沢が大きく違うのは、外食でアイスを食べる頻度が高いこと。金沢にはジェラートショップ、ソフトクリーム店が多く、一部の店は全国的にも有名になっていることも起因していると、日本アイスクリーム協会では分析する。

これら金沢の歴史、食文化、市民性、小売業の状況などが「金沢1位」の理由となるようだ。