最終実需者が産地に求める米・取組=農水省全国会議講演① わらべや日洋・戸田購買部長

農林水産省は1日、「平成30年産米の需要に応じた生産・販売の推進に係る全国会議」を開催、実需者と地域農業再生協議会による講演が行われた。今回は実需者側として、わらべや日洋(株)首都圏事業本部購買部・戸田秀幸部長の講演概要をお伝えする。

〈「相互理解の下で業務用米生産を」〉
米の実需者としての立場から産地に求めるものについてお話しする。当社は弁当やおにぎり、サンドウィッチなどの調理済み日配食品を製造しており、セブン‐イレブンとともに成長してきた会社だ。会社規模としては、2017年2月期連結ベースで売上高約2,140億円といったところ。工場は、国内に27工場、海外に3工場(ハワイ、ダラス、北京)所有しており、24時間365日フル稼働の状態だ。1日最大約600万食作っていることになる。当社の米の使用量は年間約6.3万tで、直近は7万t近くまで拡大している。なお、セブン‐イレブンは年間約20万tの米を使用している。

近年は糖質制限ダイエットなどで日本人の米離れの話も聞かれる中、米の生産と需要は減少傾向を続けており、米を取り巻く環境は厳しくなっていると実感している。ただ当社はセブン‐イレブンの店舗展開に伴い、米の調達量が右肩上がりで増加している。とはいえ、米の価格が毎年上下することに困っていて、やはり安定した価格で消費者まで商品を提供したいと思っている。

我々中食業界の使用する米について話す。家庭での場合、ご飯は炊飯直後の熱々の状態で食べることが多いだろう。しかし中食では、炊飯してから店頭に並ぶまでにタイムラグがある。また食品衛生上、炊飯後にすぐ冷却する必要もある。この点にまずはご留意戴きたい。

そうした中で、現在扱っている商品ジャンルは主に3つに分けられる。まずはおにぎり。冷たいままでも美味しさを味わうことができ、粒立ちとほぐれが良い米を求めている。次に幕の内弁当やのり弁当に代表される常温弁当(20℃)。温めてもそのままでも美味しく食べられるよう、米の粘りや軟らかさが重視される傾向にある。そしてチルド弁当(10℃以下)は、通常よりもレンジで長時間の加熱処理をするため、それに耐えうるご飯が求められている。この3つのカテゴリの中でも、おにぎりは圧倒的にロットが多い。常温弁当とチルド弁当はほぼ同等といったところだ。

これを踏まえて当社が取り組んでいることは3点ある。1つは先ほどのカテゴリごとに最適米を全国の銘柄から選定し、年間調達している。現状は20銘柄程度で、銘柄によっては年間3~5万t使用することもある。基本的には単一銘柄で使っているが、時にはブレンドすることもある。取組の2点目は産地との契約だ。数量・品質・価格の安定のために農家と直接対話し、優良産地とは長期的に取り組むべく契約手法を今後考えていきたい。3点目は米の精米基準。我々は指定した精米メーカーと一体となって、美味しくご飯を提供できるよう、使用する銘柄ごとに厳格な基準を設けて運用している。

そして、産地にいくつかお願いしたい。まずは契約について。数量・品質・価格を含め、安定的に取引できる複数年契約を前向きに進めていきたいと考えている。しかし、我々はかなりの量の米を年1回購入し、年間通じて使用するため、まずは保管費・玄米輸送費の面にご配慮戴きたい。また、通常10月の引取期限の延長など、これら業務用向けの緩和対策を検討して戴きたい。次に、ニーズに合った米生産について。昨今、各産地で高価格帯のブランド米が登場しているが、我々業界としては、どうしてもコストを商品に転嫁することが難しい。そのため、米の生産側と消費側が情報交換し、互いを理解した上で、品質が良く、かつ価格変動が少ない業務用米を積極的に作って戴きたい。これは間違いなくニーズがあると思っている。最後に、我々は生産者の方々が作った美味しい米を、美味しいまま加工し、消費者に届ける責任がある。消費者が新米の美味しさを年間通じて味わうためにも、鮮度劣化を抑えるべく、低温倉庫やカントリーエレベーターなどのインフラ整備を是非ともご検討戴きたい。

〈米麦日報2017年12月8日付より〉