日清食品冷凍、単品力強化が奏功し18年度上期売上は約9%増 大型投資も検討

日清食品冷凍・多部田雄司社長
日清食品グループの日清食品冷凍は、通期の売り上げと営業利益が4期連続の増収増益となる見込みだ。12月13日に開いた業界紙向けの年末会見で、同社の多部田雄司社長が明かした。上期(4~9月)に単品力の強化として特定の商品提案に注力し、単品で10億円規模の売上の商品が今年だけで2品が新たに成長した。メインブランドからの派生商品も堅調に推移しているという。今後は麺製品主体で提案を進めるとともに、近い将来に製造関連の大型投資も検討する。

中食需要は、30年前は食費に占める割合が7%程度だったが、今は13%とほぼ倍増しており、冷凍食品にもその効果は波及している。市販の冷凍食品にとっては追い風で、上期の売り上げは前年同期比約9%増となった。

重点施策として、単品力の強化しており、「もちっと生パスタ 牛挽肉とまいたけのクリーミーボロネーゼ」「スパ王プレミアム 海老のトマトクリーム」「日清具多 辣椒(ラージャオ)担々麺」「日清中華 汁なし担々麺大盛り」に加えて、「日清中華 上海焼そば大盛り」「日清の関西風お好み焼 ぶた玉」が売り上げ10億円商品に育った。

上期は、「スパ王プレミアム」など柱とするブランドをより強固とすべく、それぞれサブとなる商品を展開し、売り上げを伸ばした。中でも「上海焼そば」は、今年から「日清中華」のブランドを付けて、増量とともに価格を上げて提案したところ、前年から引き合いが約60%増える成長を見せたという。

コンビニ(CVS)向けの商品も、セブンイレブン限定で販売した蒙古タンメン中本とのコラボ商品「セブンプレミアム 蒙古タンメン中本 汁なし麻辛麺」が、日清食品で販売するインスタント麺のヒット商品と同等の売り上げを記録。冷食としては異例のヒットとなった。「もともとは限定商品だったが、地域限定で継続販売を決めた」と話す。若者層への提案を強める中で「(若者を含めた)広い人に冷凍食品の利便性や美味しさを知ってもらうきっかけになったのでは」とした。

カテゴリー別では、ラーメンは前年比約20%伸長、パスタは同約3%増で「スパ王プレミアム」は二桁成長。値ごろ感のある店頭売価などで消費者に支持された。和物は、玉うどんは前年並みだが、具付き麺で昨年「汁なしカレーうどん黒」がヒットした反動で前年を下回った。米飯は「チキンラーメン 金の炒飯」はNHK の朝ドラマの効果もあってか約20%伸びた。

全般的に成長を続ける一方、今後も拡大が続けば工場の生産供給能力がひっ迫する見込みもある。主力の静岡工場では2部体制で「ずっと同じものを作っている」状態だ。今後、売り上げが伸び続けた場合は「大きな投資をすることになると思う」と述べた。

価格改定については、各社が原料価格や人件費の高騰などを背景に値上げに踏み切っているが、同社は「今は予定していない」と明かす。業績は成長基調で、工場で効率的な生産が行えるよう体制を整えたことが奏功した。しかし効率化にも限界もあるため「いつかは改定を考える時期が来るのでは」と話した。今後、辛みを売りにした若者向けの商品提案や、今後の需要増を見込む高齢者向けの商品展開も検討する。

〈質疑応答抜粋〉
―増収増益の要因は

単品力強化に取り組んだことが大きい。販売でも他の商品に分散せずに効果が出た。効率的な生産も利益面で恩恵が出ている。

―SKUの絞り込みは行うのか

新製品がでれば1品削るぐらいの気持ちで行っているため、商品数をそこまで増やすつもりはない。製造の効率化にもなる。販売でも取り扱いが増えているが、当社だけで販売スペースをそこまで確保はできない。

―2020年目標の中期経営計画で明記した売り上げ目標と比較しての到達度は

具体的には言えないが、最終年度の目標近くまで来た。このまま増収増益が続くならば計画以上になるが、増えるほど厳しくはなる。

〈冷食日報 2018年12月14日付より〉