「小胞体ストレス応答」仕組み解明の京大・森和俊教授に「安藤百福賞」大賞/食創会

左から安藤宏基理事長、京大・森和俊教授、小泉純一郎会長
〈ガンや糖尿病などへの応用期待、「食、健康寿命を延ばす研究を進めていきたい」〉
食創会(小泉純一郎会長、《公財》安藤スポーツ・食文化振興財団主宰)は3月12日、都内で「第23回安藤百福賞」受賞記念記者会見、表彰式・記念講演を開催。大賞には、京都大学大学院理学研究科の森和俊教授による研究「小胞体ストレス応答の仕組みと意義の解明」が輝いた。大賞の選出は2年連続。

優秀賞には、
▽「水の摂取欲求と充足を支配する神経基盤」(カリフォルニア工科大学・岡勇輝助教授)
▽「日本が世界に誇る生ビール、その製造における微生物品質保証技術の開発」(アサヒグループホールディングス(株)グループ食の安全研究所・鈴木康司所長ら3名)
▽「代謝調節分子AMPKによる摂食量と炭水化物嗜好性制御機構の研究」(自然科学研究機構生理学研究所・箕越靖彦教授)

発明発見奨励賞には、
▽「カニ殻由来の新素材『キチンナノファイバー』を製造するベンチャーの起業とその機能を活用した食品原料としての展開」((株)マリンナノファイバー代表取締役社長・鳥取大学大学院工学研究科教授・伊福伸介氏)

――が選ばれた。

安藤百福賞は食科学の振興、新しい食品の創造開発に貢献する独創的な研究者・開発者・ベンチャー起業家を表彰するもので、23年間で10件の研究が大賞に選出されている。

記者会見で挨拶した(公財)安藤スポーツ・食文化振興財団の安藤宏基理事長は「創業者(安藤百福氏)は最初、『食足世平』、食が足りて世の中が平和になるという言葉を考え、その次に『食創為世』、食を創造して世の中に尽くす、と言っていた。今回、大賞にまさしくふさわしい方を選出できたことは非常に喜ばしい。ノーベル賞候補者として名前が挙がる方を選んでいきたいということで、まさしく森先生がそうだと確信している」と述べた。

森氏は、細胞内で蛋白質の品質管理を行う器官「小胞体」が、異常な蛋白質の蓄積を感知すると新たな蛋白質の合成を抑制、もしくは不良品蛋白質の修復を行い、修復不可能なものは分解処分することで細胞機能の正常化を図る「小胞体ストレス応答」の仕組みと意義を解明した。

ガンや糖尿病を始め、非常に幅広い病気への応用が期待されている。その森氏は「この賞の名前は知っていたが、私の研究が対象になるとは全く想定していなかった。しかし非常に名誉な賞を頂き、食への応用も十分展開できると考えている。今後は創薬に加え、食、健康寿命を延ばす方向への研究を進めていきたい」と述べた。

〈コラム・交叉点〉3年間の玄関番

〇・・・上記式典で安藤宏基氏は、NHK朝の連続テレビ小説“まんぷく”に触れて「ドラマでも創業者が発明にこだわり、徹底して取り組んでいた様子が描かれている。『創造することがもっとも価値の高いことだ』と常々言っていて、その念願がこの食創会」と話すと、大賞受賞者の森氏は「ビデオに録って毎晩楽しみに観ている。源さん(宏基氏がモデル)もここにおられるのは非常に嬉しく思っている(笑)」と応えた。また、来賓挨拶に立った柴山昌彦文科相も「今回受賞された方々のような研究で“まんぷく”になるよう、研究改革を進めていく」と話すなど、まさに“まんぷく”な一日となった。

〇・・・ただ、やや毛色が違ったのは小泉純一郎元首相。「私は1969年の(衆院)総選挙で落選した。その後、当時は佐藤(栄作)内閣だったが、角福(田中角栄・福田赳夫)戦争、派閥抗争真っ盛りの中で、私は福田先生のお手伝いをしていた。午前中は福田邸の門が開く朝7時前からお客さんがたくさん並んでいて、私は玄関番のようなことをし、午後は選挙区に帰って選挙の準備を進め、幸い2回目の選挙で当選したが、約3年間は玄関番。その時に月2~3回ほど福田邸の茶の間で福田先生とお話しされていたのが安藤百福翁で、『君が小泉君か。次は頑張りなさいよ』と激励・ご指導いただき、それがきっかけでこうして安藤さんとのご縁をいただいた」と百福氏とのエピソードを披露した。

〈米麦日報 2019年3月14日付〉