「飼料用米普及のためのシンポジウム2019」、耕畜連携の取組紹介

米麦日報 2019年3月19日付
(一社)日本飼料用米振興協会(海老澤惠子理事長)は3月15日、「飼料用米普及のためのシンポジウム2019」を開催した。関係者による講演概要をお伝えする。

〈農水省生産局畜産部飼料課・犬飼史郎課長〉
飼料用米の利用は単に輸入トウモロコシの代替ではなく、国産米としての価値を向上させ、飼料用米を使った畜産物のブランド化が重要だ。飼料用米は主に豚と鶏に給与されている。飼料自給率は現行の26%から40%(2025年)まで拡大する目標を掲げており、WCSを含む粗飼料は78%から100%、穀物を含む濃厚飼料は13%から20%で、濃厚飼料は飼料用米が鍵。

飼料用米の作付面積は29年産9.2万ha から30年産8.0万ha と27年産の水準に戻ったが、これは主食用米の価格が上昇したことで主食に回帰したということ。一方、需要側を見ると、配合飼料メーカーは「口を開けて待っているけど生産が安定しないといけない」と言っている。

2017(平成29)年度の畜産農家が直接求める需要は16万t、配合飼料メーカーの需要は100万tで、31年産での畜産農家の新規需要量は約2万t、飼料業界団体は約120万tを求めている。需給に開きがあるので、生産サイドには安心して作っていただきたい。また、配合飼料工場は太平洋側に集中しているため、飼料用米農家から工場、工場から畜産農家まで運ぶ際の輸送コストが余計にかかっている問題がある。その意味では耕畜連携が重要。さらに農水省では、2019(平成31)年度から国産の子実用トウモロコシの生産拡大を推進する。カビやコストの問題はあるが、輪作体系に組み込むことで問題を解決している事例もあり、実証事業として推進していきたい。

〈(有)鈴木養鶏場・鈴木明久会長〉
昨年の畜産物ブランド化日本一で政策統括官賞を頂戴した。大分県日出町で養鶏を営んでおり、地域の稲作農家に飼料用米を作ってもらって集荷、それを鶏に給与して卵を加工、直売所などでブランド化して販売している。今は養鶏よりも直売所の売上のほうが大きいので、卵の価格が暴落しても平気だった。鶏糞は飼料用米農家に販売する循環型システムを形成した。

今年2月には国の畜産クラスター事業を活用して飼料用米の籾米貯蔵タンクを作った。200tサイロ×5本で総額約8,000万円かかったが、半分は国の補助。大分県内約300ha の圃場から集荷しており、農家の平均単収は10a600kg程度。昨年は約1,800t集荷した。鶏には籾米を40%混ぜた配合飼料を給与している。今は飼料用米をkg 25円で買っているが、集荷や備蓄などの経費を入れるとkg 40~50円となり、輸入トウモロコシkg 30円を上回ってしまう。そのため、最終的には加工品をブランドにして、コストアップの部分を消費者から貰わないと再生産できない。

例えばkg 25円で約2,000tの飼料用米を集荷すると、約5,000万円を地域に回していることになる。国から農家にはこの10倍の補助金が行く。当社が飼料用米を地域で推進するだけで、地域社会に毎年5~6億円のカネが行くということ。荒れ地だった田んぼに5~6億円だ。

〈昭和鶏卵(株)・不破恒昭社長〉
当社は昭和産業(株)の100%子会社として鶏卵の製造・販売を行っている。グループ全体の売上高は約2,332億円だが、飼料畜産部門は526億円で、全体の22%を占める中核事業だ。昭和産業の飼料畜産部門が生産者から飼料用米を仕入れ、加工した配合飼料を養鶏場に販売する。当社はその養鶏場で生産する卵を仕入れ、製品化して販売している。昭和産業の飼料畜産部門は2008(平成20)年に飼料用米の取組をスタートし、取扱数量は2017年約1.1万tと右肩上がりで推移してきたが、近年は頭打ちだ。

昭和産業の飼料用米取扱と同時に当社も「こめたまご」の商品化を開始し、2010(平成22)年にはフードアクションニッポンのプロダクト部門で優秀賞をいただいた。こめたまごブランドが高まるにつれ、当社も高価格帯商品や産学連携を謳った商品、生協など取引先向け商品――といったメニュー拡充を進めてきた。

こめたまごの販売重量と鶏卵相場を比較すると、2012年から昨年まで販売重量は右肩上がりで推移し、その間、鶏卵相場は乱高下しているが、販売重量に大きな影響はない。今後のこめたまごの課題としては、購入の動機付けが挙げられる。卵は特売の目玉になりがちだが、飼料用米生産者の顔が見えることで購買動機向上に繋がるのではないか。また、普通卵との差別化も課題。飼料用米卵と普通卵との数値的な差異が判るような研究を進める必要がある。

〈米麦日報 2019年3月19日付〉