“オールフルーツジャム”市場好調、砂糖を使わない健康感で支持広がる

ジャム市場全体が漸減傾向にある中、“オールフルーツ”の商品は伸長を継続している
〈朝食欠食率の増加で家庭用ジャム市場は漸減傾向も、オールフルーツは伸長継続〉
縮小の続く家庭用ジャム市場は、18年も前年に続き厳しい1年となったもようだ。シェアトップのアヲハタによれば同市場は、前年比2%減の413億円と17年に続き減少した。朝食欠食率の増加に加え、健康志向を背景に消費者の甘さ(砂糖)離れも進行しており、各社の砂糖を使ったジャムの売れ行きは、苦戦を強いられた。

苦しい市場環境の中で、前年に続き好調を維持したのは同社の「まるごと果実」を筆頭とする砂糖を使わないオールフルーツジャムで、14年の同品のリニューアル以来、続伸を続けており、今期もさらなる拡大に期待がかかる。

ジャムの糖度別生産量

成熟化の進んだジャム市場は近年、漸減傾向で推移している。18年も「まるごと果実」やスドージャムが発売する「100%フルーツ」といった、砂糖を使わず濃縮果汁で煮込んだオールフルーツジャムは堅調に推移したが、アヲハタの主力「55ジャム」や価格訴求品として展開する紙カップジャムなどの砂糖を使ったジャムは一部を除き売り上げを落とし、トータルでは前年割れで着地した。
 
なお、ジャムの家計消費をみると、18年は数量で前年より23g減少の1113g、金額でも49円減少の1241円となった。一方、ジャムメーカー27社が加盟する日本ジャム工業組合による18年ジャム類生産量(小売用・業務用・学校給食用・りんごプレサーブ合計)は、前年比1.7%増の5万1603トンと微増した。家庭用は減少したが、業務用が10.5%増の1万9083トンと大きく伸長し、トータルの伸びにつながった。

ジャムの家計消費の推移

前年に続き、「55ジャム」が苦戦したアヲハタは、市場縮小の主な要因に朝食欠食率の増加を挙げた。最新(17年)の統計では、朝食欠食率は男性が15.0%、女性が10.2%で、20代男性の3割が「(朝食は)何も食べない」と回答するなど20代男女でその割合が最も高い。朝食のパンやヨーグルトとの食べ方で市場を拡大してきたジャムにとっては、朝食欠食率の増加は市場縮小に大きく影響している。また健康志向に加え、ブームとなっている糖質制限もジャムの売り上げ減につながった。消費者の甘さ離れを受け、ジャムの糖度別生産量は40度未満の生産量が増えた。
 
一方、各社とも好調なオールフルーツジャムは、砂糖を使わない果実の甘みのみの健康感から支持されている。「まるごと果実」の糖度が約30~35度と低糖度な点も消費者の需要をつかんでおり、今後も成長が見込まれるカテゴリーだ。
 
〈はちみつ好調、スプレッド類も堅調〉
ジャム市場が縮小する中、同じパン周り商品では、健康志向ではちみつが好調、ピーナッツやチョコレートなどおやつ需要もつかむスプレッド類が堅調に推移した。
 
今春の新商品では、トレンドの和素材を使ったこだわり商品として、スドージャムが抹茶あずきを、ソントンが黒ごま、きなこクリームを発売しており、好調なスプレッドの拡充が相次いだ。3品とも紙カップでの発売で、廉価販売が常態化している紙カップの付加価値品として投入し、収益確保にもつなげていくという。
 
〈ジャム市場の課題はパン・ヨーグルトを越えた食シーン創出〉
今後の市場回復に当たって課題となるのが、定番のパン、ヨーグルトとの食べ方を越えた新たな食シーンの創出だ。今期販促施策でも各社とも料理用途や菓子素材での利用を促す施策が目立つ。また朝食やジャムを食べない若年層を狙った施策も急務の課題としてあり、各社の模索は続く。
 
※日本農林規格で、“ジャム”は果物や野菜などに砂糖を加えて煮たもので糖度40度以上と定義されている。「まるごと果実」など砂糖不使用や糖度40度未満のものは、同規格の定義上は“フルーツスプレッド”。なお、本稿では砂糖添加の有無や糖度に関わらず、一般に慣用される“フルーツジャム”の呼称を採用している。