7月3~5日、米に着目した初の大規模展示会「第1回 お米産業展」がパシフィコ横浜で開催され、ブース展示のほか、有識者による講演が行われた。(一社)日本健康食育協会・柏原ゆきよ代表理事の講演「ストレス社会を生き抜くための疲れないカラダは米食から。~提案次第でお米の消費拡大&新たな市場創出~」の要旨は以下の通り。

私たち日本健康食育協会の理念は「食から課題を解決し、元氣な社会を創造する」。健康のための食事というと何か特別なことをするイメージがあるが、普段の食生活に難しい栄養学を持ち込むとなかなか続かないので、そうした「普通」に寄り添った情報発信をしている。今回のテーマは「米」だが、米業界は何だか元気がない。私からすればやるべきことが山ほどあるのに、それをやっていない印象だ。私が重視しているのは米を取り巻く社会背景やベースとなる生活なので、今回はその話をする。

米の消費は右肩下がりで、今やピークの半分以下だ。ただ、統計だとなかなか実感は湧かない。2016年の1人あたり年間米消費量は54.4kgで、月にすると約4.5kg、1日あたり149g(≒1合)だ。1人1日1合をごはんの量で考えると茶碗2杯強だが、私の肌感覚だと1杯強の人が多い。消費減少の一番の理由は食の多様化、簡単に言うと米以外にも色々な食べ物があるからだろう。日本人の食が豊かになったとも言えるが、正直なところ、米業界はあえて米を選んでもらうための企画・アイディアが無い。そもそも、今回の「お米産業展」のような展示会がこれまで無かったのがまず問題だ。これは業界の努力不足だと思っている。食の選択肢が多いなか、「だから米を食べたい」という理由づけが必要だが、「日本人の主食だから」では誰も食べない時代だ。楽しさや豊かさを感じられるような明確な理由付けが欠けている。

ただ、総務省の家計調査を見ると、主食自体が減少傾向にある。近年で下げ止まっているのはパンぐらいなものだ。おかずばかり食べる人が増えていて、食事自体しない人も増加している。米の良さなどもそうだが、ちゃんと食事することの重要性を広める必要もある。また、炊飯が面倒だという人も多い。ライフスタイルの変化で共働き世帯が増加するなか、仕事終わりに炊飯するのは時間がかかって億劫だ。そもそも炊飯器を持っていない人も増えているので、土鍋などで簡単に炊く方法も広めていかないといけない。共働き世帯の増加は経済的の問題にも起因するが、それならば自炊のコスパを尚更伝えるべきだろう。さらに、パックご飯や冷凍米飯は伸びており、ここがより美味しくなることで全体の米消費減に歯止めがかけられるのではないか。

ともかく、米が選ばれなくなった一番の理由は「誤解が多い」ということだ。例えば米はまとまった数量を1回に購入するので、それで「米が高い」と言う人がいる。本来、米は太りにくい体質を作るのだが、食べ方が悪ければ何であれ太るわけで、それを知らず「とにかく米を食べると太る」と言う人もいる。「血糖値を上げる」「美容に良くない」など健康面での誤解まである。

米の消費を回復させる上で重要なのは4点。まずは米の価値を魅力的に伝えることで、価値が伝わっていないからこそ今は誤解だらけだ。次に目的に合わせた米の必要性を伝えること。ターゲットによって必要量や食べ方は変わるので、目的に合わせた伝え方が必要だ。そして、効果の出る食べ方の提案と、実践しやすい食環境の提供。特に食環境について、今回の展示会はカフェレスジャパンとの併催だが、カフェ業態ではごはんメニューをあまり見ない。選択肢に無いのならば定着するわけがないので、環境・メニュー提案をしていかなくてはならない。

全体のパイが減少するなか、産地の皆さんはピラミッドの頂点と言ってもいいこだわり米、ブランド米のゾーンで競争しているが、それは間違っている。人口が減少しているなかで、如何に全体のパイを増やすかを考えるべきだ。消費現場では「米は食べちゃ駄目なの?」と安心して食べられない人が意外と多い。米は食べるけど控えめという、こうした方々に安心感を提供し、食べたい人がちゃんと安心して食べられる価値を提供していく必要がある。価値を伝える上では、安心できるサポート体制としっかりしたエビデンスが欠かせない。

日本は平均寿命が伸びているものの、健康寿命の統計データを見ると、平均で10年間は寝たきりということが判る。高齢化率も先進国ではダントツで、2060年には国民の4割が65歳以上の高齢者になる。

健康的に生きていく社会を作るのは日本の大きな課題だ。社会保障費が増大するなか、厚労省は2008(平成20)年に保健指導でメタボ健診を義務づけた。当時は、5年後の2013(平成25)年にメタボとその予備群を25%削減するという目標を掲げていたが、2015(平成27)年に2.7%程度しか減少していなかった。これは何故か。現場ではカロリー制限のアドバイスしかせず、皆が手っ取り早い「とりあえずごはんを減らす」ことしかしていなかったからだ。栄養士も「ごはんは茶碗半分にしよう」とアドバイスしてしまう。その結果、食事でのメタボ改善は難しいという考えが現場に蔓延してしまった。

安心して米を食べられる社会を作るには、まず業界の皆さんがブレないことだ。また、ちゃんとごはんを食べても健康になるノウハウを知る必要もある。そして、米に関わる方々それぞれが自分の強みに特化し、単発の取組では意味が無いので、継続的・長期的に取り組むための仕組みづくりが必要だ。

1つ言いたいことがある。私は米関係の会社から「どうすれば消費が拡大しますか?」と相談を受けることがあり、その際は今申し上げたようなお話しをさせていただいている。ただ残念なことに、そうした悩みを抱えている米の関係者にメタボ・糖尿病の方が多い。米の健康性をアピールするならば、まず自分たちの健康に気を配らなくてはならないだろう。また、「朝ごはんを国民に食べてほしい!」という農水省の会議に呼ばれることもあるが、それに参加している官僚もそもそも朝ごはんを食べていない方々が多い。はっきり言って、この業界はそのあたりの説得力が無い。まず自分を変えて、そして自社を変えないことには、米の消費減少という傾向を変えることは難しいだろう。落ちるところまで落ちたなら、あとはV字回復するのみ。この業界にはまだまだ伸び代があると私は思っている。

〈米麦日報 2019年7月11日付〉