“すごもり需要”を背景に拡大が見込まれるジャム市場

ジャム市場は、朝食欠食率の増加や糖質制限に対する意識の高まりを背景に、ゆるやかな減少が続いている。

だが、砂糖を使ったジャムや価格訴求型の紙カップジャムが低調に推移する一方、砂糖不使用のフルーツスプレッドはこうした消費者ニーズを捉え、年々伸びている。砂糖入りのジャムに比べ、果物そのものを前面に打ち出すことができることから付加価値品として広がり、ジャム単価の上昇にも貢献している。

より長期的な市場活性化を図るため、近年ジャムメーカー各社では食パン、ヨーグルトという従来の食べ方だけでなく、新たな食シーンの提案に乗り出している。まもなくジャムの最需要期の4~5月を迎える。今年は新型コロナウイルスの影響による“すごもり需要”が予想され、市場拡大が見込まれる。

2019年国内ジャム類生産量(小売用、業務用、学校給食用、りんごプレサーブ合計)は前年から4.8%減の4万9,161tだった。日本のジャム市場はブルーベリー、イチゴ、マーマレードで約85%を占めるほど3フレーバーへの人気が集中し、他フレーバーの育成が進んでいない現状がある。

左=ジャムの購入数量の推移、右=ジャムの糖度別生産量(小売用)

左=ジャムの購入数量の推移、右=ジャムの糖度別生産量(小売用)

 
加えて、ジャム単体で利用する機会が少ないことも、市場飽和の要因となっている。これまで日本のジャム市場は、朝食に食パンやヨーグルトと一緒に食べることを継続的に提案することで、需要を喚起してきた。その結果、現在では「食パン7割、ヨーグルト3割」(ジャムメーカー)と言われるほどこの食べ合わせが定着しており、結果的に朝食欠食率や、食パンとヨーグルトの消費動向がジャムの需要に与える影響は大きくなっている。
 
〈食品産業新聞 2020年3月30日付より〉