丸紅、国際的な穀物デジタル管理プラットフォームの運営・開発に参加

各プレイヤーが統一プラットフォームに参加し、メールでの交信をPF上での交信に統合する
丸紅(株)(柿木真澄社長)は12月15日、スイスのCovantis SA(コヴァンティス、以下「Covantis社」)に出資することを発表した。穀物・油糧種子などのサプライチェーンのデジタル管理プラットフォームの運営・開発に参加する。同日、丸紅は本紙などの関連紙誌に対して説明会・個別説明を実施した。

Covantis社は2020年2月設立。穀物トレードの事務手続きにブロックチェーン技術を利用してデジタル化するサービスを提供する企業だ。穀物メジャー6社(ADM、Bunge、Cargill、LDC、Viterra《旧 Glencore》、COFCO)6社が共同出資しており、丸紅の出資後は7社の株式比率が同率となる予定だ。2021年3月にブラジルからの輸出手続き向けのサービスを開始している。

穀物トレードの業界の課題として、プレーヤーが非常に多く、コミュニケーションにかかる手間が煩雑になっていることがある。記事冒頭のイメージ図のように、傭船者と輸出者の間にトレーダーA・B・Cがいた場合に、

〈1〉最終買主=傭船者が売主=トレーダーCに対して「貨物を積載する本船」を通知
〈2〉トレーダーCはトレーダーBに同様の通知を転送、最終的には輸出者へ
〈3〉輸出者が本船通知に対してOKを出し、トレーダーAに返信→また転送が繰り返され傭船者へ
〈4〉日々の船の到着予定、必要書類リストなどの交信が商流上で繰り返される

――とこのように延々とメールの発信・転送・確認・分類作業が発生する。

Covantis社の推計によると年間の穀物トレードの事務手続きに関連するメール数は約2億7500万通で、1日当たり約75万通となる。「会社の規模にもよるが、各社が毎日数千通のメールを処理しているのではないか」(丸紅)。

また、世界の穀物(トウモロコシ、大豆、大麦、小麦)貿易量は2020年時点で5.5億t強で、2031年見通し(トウモロコシ、大豆、大麦、小麦、大豆ミール)では7.76億tに達する見込みだ(USDAより)。システムが変わらなければ、貿易量の増大に伴って事務手続きの労力も増大していくことになる。

現在、Covantis社が提供しているサービスは、個々のメールや書類のやりとりを統一プラットフォームに統合するというもの。効果として、

△単純作業軽減
△情報の一元化による手間と人件費の削減
△作業効率化による社員満足度の向上
△ミス削減に伴う物流コストの削減(例:ミスコミュニケーション解消による、船舶ロスタイム削減)
△支払プロセスの速度上昇に伴う有利子負債や金利の削減
――が期待される。

なお、Covantis社が2021年3月にブラジルで開始した輸出手続き向けのサービスの実績は5,100万tに達している(3~11月のブラジルの穀物《大豆・トウモロコシ・大豆ミール》総輸出量は9,500万t)。ブラジルから輸出された穀物の54%がCovantis 社を通過しており、Covantis 社は第3四半期(12月~2022年2月)には68%になると推計している。「ブラジルで仕事をする社員からも、効率が良くなったという声が上がっている」(丸紅)。

現在のCovantis社が提供するサービスは船舶による港から港への穀物トレードの事務手続きを統一するもの。丸紅は「あくまで資本参加後に正式に検討していくこと」とした上で、「産地での生産管理や集荷、消費地での流通、加工まで情報を統合していくことができる可能性もある」としている。

〈米麦日報2021年12月17日付〉