愛知 取水施設「明治用水頭首工」漏水で農工業に大きな影響、県内シェア約5割の米品種“あいちのかおり”田植できず

「明治用水頭首工」仮設ポンプ設置の様子
愛知県豊田市の取水施設「明治用水頭首工」(東海農政局所管)で5月17日、大規模な漏水が発生、農業・工業用水に大きな影響が出ている。

米麦日報の聞き取りによると、東海農政局は5月19日現在で「18日に仮設ポンプ(1.72立方メートル/秒=1秒当たり1.72tの水を供給)25台を設置。19日には1.0立方メートル/秒の仮設ポンプを17台追加して用水の確保をしており、さらに追加ポンプの手配も進めている。19日から専門家が現地入りし、現地調査にあたっている」とのことだ。

工業用水は1秒当たり3t、農業用水は5tを供給量の目安としており、「影響が甚大な工業用水から優先的に取水しているが、不足しているのが現状」だという。

明治用水から農業用水を受け入れている地域は8市(岡崎・碧南・刈谷・豊田・安城・西尾・知立・高浜)で、影響を受ける農地面積は約4,500ha。愛知経済連によると、4つの単協(あいち中央・西三河・あいち三河・あいち豊田)が該当する。

「米生産はこの4単協で高い割合を占めており、安城市は『日本のデンマーク』と呼ばれるほど農業が盛ん」だという。愛知では県の米生産のうち半数近くのシェアを晩生品種のあいちのかおりが占めており、これらが田植できない状態となっている。「既に田植をしている品種に関しては、よほどのことがない限り無事だが、これから植えるあいちのかおりは危機的状況。加えて、関係地域は採種地でもあるため、来年の種子の心配もしている」とのことだ。

特にあいち中央農協管内は、麦の生産も盛んなため、5月末に入ると小麦が収穫を迎える。愛知経済連は「小麦の収穫と復旧のタイミングが被ると田植をする人手が不足する。見通しが立たないなか、一刻も早い復旧を願っている」と述べた。

〈米麦日報2022年5月20日付〉