3月11日、あの日から10年が経った。当時の食品産業新聞を振り返ると、直前に制作し発行したトップの見出しは「弊社創立60周年を祝う」とし、当時、都内で開いた当社の創立記念セミナーの模様を伝えていた。そして震災直後に製作した次号は「東日本巨大地震 被災地への食料供給に全力」とし、食品・流通業界が義援金や被災地へ飲料水や即席めん、粉ミルクなどを提供する動向をつぶさに伝えていた。
 
週2回の発刊のため仕方のないことだが、お祝いムードの紙面から一転、被災地報道への変わり様を見て、当時感じた不安、動揺、もどかしさ、怒りなどの記憶を思い起こされた。
 
震災後間もなく、ある畜産団体の避難所での炊き出しに同行した。ある被災された方の中には、暖かな豚汁を口にした途端、堰を切ったように涙を流した。それが、食べ終わるころには「ありがとう、美味しかったです」と笑顔で言葉を返していた。ほんの一瞬の出来事で、表現が難しいが、この時ほど“食の持つチカラ”というものを感じた。いまでもあの光景は鮮明に覚えている。
 
弊社は1951年3月1日に創立した。2021年で創立70周年を迎える。東日本大震災と同じ月だ。これから時代が流れるにつれて、あの震災について人々からの記憶が薄れる部分もあると思う。でも、同じ時期に節目を迎える当社としては、何代も世代が変わっても“あの日”に向き合い続けていきたいと思う。
 
〈食品産業新聞 2021年3月18日付より〉