「キットカット」外袋を紙に変更、プラスチックごみの課題解決目指す/ネスレ日本

9月下旬出荷分から使用する「キットカット」紙パッケージ
〈2022年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能に〉
ネスレ日本は、プラスチックごみの課題解決に向けて、「キットカット」の外袋を紙パッケージにする。主力の大袋タイプ5品の外袋をプラスチックから紙パッケージに変更し、9月下旬出荷分から全量切り替えを行う。これにより、同社では年間約380トンのプラスチック削減を見込む。今後、個包装での取り組みも進め、2021年までにはリサイクルしやすい単一素材にする考えだ。

190カ国で事業展開するネスレの中でも、「キットカット」の売り上げトップは日本。その主力商品をいち早く紙に変更するため、グローバルでも注目される取り組みとなる。

なぜ、日本からプラスチックごみの解決に向けた本格的なスタートを切るのか。ネスレ日本の高岡浩三社長兼CEOは、8月1日に行われた発表会で、「グローバル企業のネスレとして、どのように率先してプラスチックごみの課題解決に取り組むかは重要だ。今回、これほど販売量の多い商品を対象に取り組むのは、グローバルのネスレの中でも日本が初めて。それは、日本の“キットカット”が世界一の売り上げであり、売り上げのうち10~15%はインバウンドで購入されているためだ。紙に変更することでコストは上昇するが、世界中のお客様が注目し、購入して下さる日本の“キットカット”で真っ先に取り組まなければならないと考えた」と話した。

ネスレ日本 高岡浩三社長兼CEO

ネスレ日本 高岡浩三社長兼CEO

素材に紙を選んだ理由については、「プラスチックがごみとして外に出てしまう危険性をまずは止めることが先決だ。燃やすとCO2は出るため、100%の問題解決にはならないかもしれないが、いまできるベストな方法は紙への変更だと考えた。今後の研究により、最終的に水に溶ける生分解性の素材が発明され、なおかつ、現在の品質保持期限を維持できるようなものがあれば、切り替えていく可能性はある」と話した。
 
外袋をプラスチックから紙パッケージに変更する商品は、
▽「キットカット ミニ」(14枚)
▽「キットカット ミニ 大人の甘さ」(13枚)
▽「キットカット ミニ 大人の甘さ 抹茶」(13枚)
▽「キットカット ミニ 大人の甘さ 濃い抹茶」(12枚)
▽コンビニエンスストア向け「キットカット ミニ」(12枚)
――の5品。

「日本のプラスチックごみの現状(2017年)」/ネスレ日本資料

「日本のプラスチックごみの現状(2017年)」/ネスレ日本資料

また、パッケージを紙に変更するこの機会に、これまで廃棄されていたパッケージを使い、日本の伝統の想いや願いを伝える象徴の「折り鶴」などを作り、大切な人に想いを伝えるという新しいコミュニケーションを開始する。
 
同社は、今回の「キットカット」のパッケージ変更を最初のステップとし、将来に向けた以下のコミットメント(約束)を同日発表している。
▽2020年9月には「キットカット」大袋全製品の外袋を紙パッケージに
▽2021年には「キットカット」個包装をリサイクルしやすい単一素材に
▽2022年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にする
 
一方、「ネスカフェ」のコミットメントでは、
▽2023年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にする
 ――とした。
 
なお、グローバルのネスレのコミットメント(2018年4月発表)では、
▽商品の包装材料を2025年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にする
――としている。

これは、プラスチック廃棄物が埋め立て地や海洋に蓄積・汚染し、鳥や魚などの野生生物が危機に瀕しているという実情から、ネスレが優先的に取り組むべき課題だと受け止めているためという。
 
高岡社長は、「世界のトップ企業の中では、これから100年、200年と永続して企業活動を続けていくためには、単に売り上げと利益を伸ばしていけばいいという時代ではないという認識がある。企業の利益ある成長に関わる全てのステークホルダー(株主、従業員とその家族、生産者、消費者など関係者)の方の課題の解決も我々メーカーが担っていくという社会的責任が求められている」とした。