東京五輪組織委員会は1月29日に都内で開いた、持続可能な調達WG(ワーキンググループ)で、パーム油の調達基準について審議した。今回はこれまでのヒアリングなどを踏まえて、事務局がまとめた草案を基に、調達基準の検討ポイントを議論したが、まだ準備段階にある政府認証のMSPO(マレーシア)、ISPO(インドネシア)に対して、一定の実績を持つ民間認証のRSPO主導で調達が行われた場合、認証コストの不透明さからパーム油の輸入コスト上昇につながる懸念や、政府認証の排除に今後つながる恐れから、民間認証・政府認証両方の選択肢を確保しておきたい、日本植物油協会、油糧輸出入協議会といった事業者側と、政府認証では労働・環境問題などの規制は十分に行えないと主張する、WWFジャパンなど民間団体側との議論はかみ合わないまま、議論は終わった。

これを受けて、当初は3月末を予定していた調達基準とりまとめを4月中に延期した上で、3月上旬に開くWGで仕切り直すこととなった。

〈政府認証排除なら民間認証独占を懸念、コストの不透明さを消費者に説明できず〉
事務局が今回示した調達基準の草案では、調理用(揚げ油など)に加え、加工食品、石鹸・洗剤の原料に使われるパーム油(パーム核油含む)を対象にした上で、持続可能性の観点から、〈1〉合法性=生産された国・地域における農園の開発・管理に関する法令などに照らして手続きが適切になされたもの。〈2〉環境保全=農園の開発・管理において、生態系の保全、天然林や泥炭地の開発・管理に適切な措置が講じられていること。〈3〉先住民の権利保護=農園の開発・管理において、先住民などの土地に関する権利への配慮がなされていること。〈4〉労働環境の確保=農園の開発・管理において、労働者の適切な労働環境の確保。児童労働、移民も含めた強制労働などの規制対策――の4点を重要基準として示した。

また、認証機関についてはヒアリングなどの結果、民間認証、政府認証双方の評価は一長一短であることから、認証ありきとせず、〈1〉~〈4〉の基準が守られていることが第三者機関などで確認されれば、認証油でなくとも調達を認める方向性が示された。

これに対して出席委員からは、パーム油の中間加工品や最終製品をどこまで対象とするのか線引きが不明確との意見や、〈1〉~〈4〉の基準のさらなる明確化・具体化を求める意見が示され、事務局として検討することとなった。しかし、WGの審議時間の大半は、調達基準は「認証ありきではない」との前提に立ちながらも、政府認証と民間認証の是非を巡る応酬に費やされた。小西雅子委員(WWFジャパン自然保護室次長)ら民間団体側の委員は、政府認証は労働環境の確保、とりわけ強制労働に関する規制や、規制の実効性が不十分であり、このまま東京五輪のパーム油調達に関与した場合、いわゆる「お墨付き」を与えることになると懸念を示した。

一方で事業者側は、井上達夫特別委員(油糧輸出入協議会専務理事)は、規制の実効性を担保するのは認証機関ではなく政府機関だと指摘し、政府認証が不十分なのであれば政府ベースで改善を要求するべきと主張した。さらに民間認証は、認証コストの透明性に疑問があり、消費者や事業者にコストの説明ができない上に、仮に政府認証を排除した場合、民間認証の独占につながる恐れがあり、パーム油の用途の幅広さも考慮した場合、大きな批判を受ける可能性があると主張した。

齊藤昭特別委員(日本植物油協会専務理事)はマレーシアなどの現地視察を踏まえて発言し、マレーシアパーム油庁(MPOB)の施策は現実にパーム油相場に影響を与えていることも含めて、調達基準の実行可能性は両国政府が担保するしかなく、現実に努力していると述べた上で、不十分な所は改善を求めながら、政府認証と民間認証が切磋琢磨する形が望ましいとの見解を示した。

以上のように会議時間を約30分延長しても議論は平行線をたどったことから、秋月弘子座長(亜細亜大教授)は打ち切りとし、次回に改めて議論することとした。

〈大豆油糧日報 2018年1月31日付より〉