〈インタビュー〉神州一味噌・松出義忠社長 構造改革に着手、社員の不安を期待に変えていくことが必要だった

神州一味噌・松出義忠社長
みその醸造を開始してから100年の歴史を誇る、宮坂醸造が、16年9月にさらなる飛躍と発展を目指し、サッポロホールディングスの傘下に入った。その一年後には社名を神州一味噌に変更。そして今年3月26日付で新たな舵取りを任されたのが、サッポロホールディングス執行役員の松出義忠氏。そこで、神州一味噌としてまず取り組んだこと、そしてこれからの事業展開について聞いた。

──サッポロホールディングスの傘下に旧宮坂醸造を取り入れたことで、得たメリットをお聞かせください。

サッポロホールディングスでは、食品という分野を強化したいという思いがあり、宮坂醸造に傘下に入ってもらった。一番のメリットは研究開発の幅が広がったこと。ビールや飲料に加えて、大豆や糀、発酵などの研究に取り組むことで、将来的に新しい商品開発に活かせるといった期待が高まったと考えている。

──サッポロホールディングスの傘下に入り、まず取り組んだことはなんですか。

傘下入り直後は副社長に就任し、宮坂勇一郎前社長と協力して、経営計画の作成に取り組んだ。その計画を実行するフェーズの初年度が今年ということで、この度社長に就任した。

まず取り組んだことは社内の構造改革。社員の不安を期待に変えていくことが必要だった。サッポログループのインフラを活用して、ITのインフラを整え、ノウハウの活用では物流や仕入れ、経理などといった分野にもサッポログループのインフラを活用してコスト削減を実施した。これからは、お客様に魅力ある商品をしっかりお届けしていく。画期的な商品や満足していただける味の開発などに取り組み、製造部門では老朽化した設備を順次入れ替えていきたい。

社名変更に関しては、サッポログループに入ったから社名変更したわけではない。真澄の宮坂、神州一の宮坂と言われていたので、商品名と社名をまずは一本化したかった。サッポログループに入ったことを起点として、ブランド力の強化はサッポログループの方針でもあったので、社名の変更を実施した。

〈健康、簡便、本格、多様化、4つの軸で商品開発、王道のみそで訴求〉
──ブランドの強化ではどんなことに取り組みたいですか。

商品の中身を強化することが必要になってくる。社名変更は名札を変えたにすぎないので、その中身はどうなのかと問われた時に「何も変わってない」ではせっかく興味を持っていただいても、期待に応えることはできない。ブランドの強化とは商品の中身をしっかりしていくことと、それをお客様にしっかりアピールしていくことが必要だと思っている。去年も一昨年も新商品は出しているが、今年からは、神州一ブランドを前面に出して商品を育てていこうとしている。今夏は健康系をひとつのテーマとして取り組んだ。健康ネバネバ系として、納豆やオクラを使った即席みそ汁などを新発売している。

そして今秋は「本格」をテーマにした新商品を用意して、ラインアップの強化を図りたい。

──商品開発ではどんなことをテーマにしていきたいですか。

健康、簡便、本格、多様化。この4つの軸で商品開発を考えていきたい。

春夏向けの新商品では、健康をテーマに、納豆やオクラなど、夏野菜などを入れた商品を開発した。また、サッポログループとのシナジー効果で言えば、「おみそ汁で乳酸菌」。サッポロビールの大麦由来の植物性乳酸菌「SBL88乳酸菌」を採用し、乳酸菌と食物繊維を摂取できる食品として改めてリニューアルして発売した。

今後は、本格を追求した王道のみそを訴求しながら、画期的な商品もリリースしていきたい。画期的な商品開発の種はすでに持っている。1年後を楽しみにしてもらいたい。

──神州一味噌では何を強みとしていきたいですか。

これまでは、商品アイテムが多かったので、もう少しメリハリを付けて商品を育てていきたい。特に、即席みそ汁は市場が拡大している分野なので、力を入れていく。いろいろなプライスゾーンの商品をそろえながら、売れる商品は2ケタ増を狙っていきたい。また、味でも特徴あるものを提案していく。主力商品であるレトルト具材を使った即席みそ汁シリーズは当社の強みだと思っている。これからも、お客様の視点で物事考えていくスタンスで、消費者や業界関係者に、面白いと思ってもらえる商品を追求していきたい。

──将来的な展望をお聞かせください。

ブランドを輝かせたい。そのためには良い商品を作っていかなければいけない、そして良い商品をしっかりアピールしていかなければいけない。そうしたことが社員の自信につながって、もっといいものを作っていこうと士気も高まる。

日本というマーケットから世界へ向けて情報を発信し、この分野なら「ナンバーワン」という商品を作り出していきたい。

〈大豆油糧日報 2018年8月13日付より〉