昭和産業、ボーソー油脂を完全子会社化へ、米油を加え競争力さらに高める

昭和産業は5月27日、2020年度決算の見通しや新中期経営計画について、新妻一彦社長による説明動画をウェブで発表した。2020年度からスタートした中計(2020‐2022)では、基本戦略のうち「事業領域の拡大」へと重心を移していくが、「新たな重要施策が2つ動き出した」とし、ボーソー油脂のTOBとアグリビジネスへの挑戦について説明した。

5月14日に発表したボーソー油脂に対するTOBについて新妻社長は、「当社は大豆、菜種、ヒマワリ、オリーブを原料とした多種多様な食用油を取り扱っている。そこに米油を加えることで事業領域を拡大し、業界での競争力をさらに高める」と強調した。

また、「今回のスキームはボーソー油脂の発行済み株式を全て買い取り、完全子会社とすることが目的だ。それにより一貫した経営戦略のもと、必要な施策を迅速に遂行できる体制を整備し、当社の経営資源やノウハウを最大限に活用することが、両社の企業価値の向上につながる」と考えを示した。

シナジーについては、「製造体制の統合による生産効率の向上」「両社の商材と販路を活用したクロスセル」「物流・購買コストの削減」「研究開発の知見の相互補完による開発の加速」の大きく4点にあると考えているとし、「まずはこのシナジーを早い段階で発揮させ、同時に新しい展開に進める体制を構築していく」と展望を語った。

5月11日発表したアグリビジネスへの挑戦については、「これまでの穀物ビジネスの枠組みを超えたチャレンジとなる。中計(2020‐2022)では、次期中計での本格生産に向けた実証実験を繰り返し、育成につなげていく」とした。

中計(2020‐2022)のスタートとなる2020年度については、「新型コロナウイルスの影響は第2四半期まで続くと想定しており、売上高は46億円減、営業利益、経常利益はともに8億円の下振れを織り込んでいる」と説明した。通期では増収減益の予想で、機能性製品の拡販と油脂製品などの価格改定を継続実施していくとした。

〈内食需要が高まる家庭はオリーブ油拡売と天ぷら粉60周年のPR強化〉
また、2020年度からは5つのセグメントに変更するとした。このうち、油脂食品事業は、新型コロナの影響で売上高は27億円減、営業利益は4億円減を見込み、通期では増収減益を予想する。業務用は外食需要減退の影響を受け、特に油脂、プレミックス製品は減少を見込む。家庭用は、内食需要の高まりにより、プレミックス製品の増加は継続する見込みとしている。

施策としては、業務用は油脂製品の価格改定と販売管理の徹底に努める。また、課題解決型提案営業に注力し、大豆たん白の拡販にも取り組むとした。家庭用については、オリーブ油の拡売と天ぷら粉60周年に向けたPRを強化する。ただ、「新型コロナの影響によって、企画していた天ぷら粉60周年の販促に若干の影響が出ている」とした。

中計(2017-2019)の総括としては、「物流費やエネルギーコスト、人件費などの想定以上の上昇で目標は実現できなかったが、経常利益は過去最高益を更新できた」と振り返った。19年度は営業利益と経常利益がともに過去最高益となり、経常利益は初めて100億円を超えた。油脂・製粉事業は減益となったが、糖質事業の利益が前年を大きく上回ったことが寄与した。

中計(2020‐2022)は「SHOWANew Value Creation~SHOWAだからできる新たな価値とは~」を基本コンセプトとしている。事業間シナジーの追求とオープンイノベーションの推進により、新たな価値を創造し、多様な食シーンに貢献することを目指す。

「サブタイトルで『価値とは~』と表現したのは、社員が新しい価値を常に自分に問いかけ、考え抜いて行動してもらいたいという意識改革への想いを込めた」と述べた。22年度の目標値として、売上高2,800億円、経常利益130億円を掲げる。基本戦略は「基盤事業の強化」に注力しつつも、「事業領域の拡大」と「社会的課題解決への貢献」へと重心を移していく。

〈大豆油糧日報2020年5月29日付〉