〈大豆ミートビジネス最前線〉ベジタリアンブッチャージャパンが海外ブランド植物肉のハンバーガー店・肉屋をオープン、Z世代をターゲットに

ベジタリアンブッチャー「フィッシュカツバーガー」
ベジタリアンブッチャージャパン(東京都豊島区)は8月26日、日本初という海外プラントベースミート(PBM)ブランドのハンバーガー店と肉屋を東京・池袋にオープンした。ターゲット層を、1990年代後半以降産まれの「ジェネレーションZ(Z世代)」に絞っているのが特徴で、サブスクリプションやフードシェアリングフリッジの設置といった先進的な取り組みを行っていることにも注目だ。

村谷幸彦社長CEOは元々、焼肉店を手掛けていたが、フードテックに関心を持ち、アプローチした中で友好的だったオランダのベジタリアンブッチャー社と日本国内での専売契約を締結し、2017年8月に同社を設立した。

ベジタリアンブッチャージャパン・村谷幸彦社長CEO

ベジタリアンブッチャージャパン・村谷幸彦社長CEO

設立当初は飲食店への卸業務やネット販売を行っていた。ただ卸業務は、「味が良ければ導入されるわけではない。自社で作り上げていかないと、ブランドストーリーや世界観が伝わらない」と考え、実店舗を出すことで、サステナビリティの取り組みやPBMを体験してもらうためオープンしたという。
 
ターゲットを90年代後半以降に生まれたZ世代に絞っている理由について、「われわれの世代は肉を食べるのが当たり前で、その概念を崩すのは難しい」と指摘する。対してZ世代は、「生まれた時からネットがあり、グローバルな感覚を備えている。新しい黒船としての提案も受け入れられやすい。年配の人は『なぜ植物肉なのか』となる。環境というワードがスッと入りやすい世代にアプローチをかけた方がいいと考えた。5~10年かけて定着させていきたい」と説明する。
 
〈卵や乳はケージフリーのもので認証油を使用、香料なども植物性にこだわる〉
ベジタリアンブッチャーのPBMは、植物性の素材を使ったビーフやチキンのパティ、チキンナゲット、ミートボール、ミンチ、ツナなどをそろえる。環境先進国オランダの商品のため、環境に配慮しているのも特徴だ。一部の商品に使っている卵や乳はケージフリーのもので、パーム油は認証油を使っている。香料などもすべて植物性にこだわっている。
 
同店で販売するハンバーガーは、それらを用いた植物性のビーフやチキンのパティ、フィッシュカツなどを用いた商品をラインアップする。有名ハンバーガーチェーンにもメニュー開発を手伝ってもらったという。客単価は1,500円を想定しており、「食費と捉えると高いが、価値をどこに見出すか」と述べるように、社会貢献と考えれば価格の印象も変わるとみている。
 
オープン初日はビーフバーガーが人気としていたが、フィッシュカツバーガーのような珍しい商品もある。繊維状大豆たん白などを使った魚肉フリーのツナに、カツの衣は米粉を使って揚げている。
 
併設するPBMの肉屋は、ネット販売よりも安価な価格設定で、送料もかからない。

併設するプラントベースミートの肉屋

併設するプラントベースミートの肉屋

ウェルカムワインも用意している。ワインはハンバーガーと相性がいいことから店内でも注文でき、一緒に食べてもらうことも目指す。それによって、「大豆食品に持たれている安価なイメージを変えていく」と述べる。
 
飲食店ではまだ珍しいサブスクリプションプランも用意する。月額580円で、店内利用時の会計20%オフ、ドリンクバー無料、レシピ動画配信などの特典を用意している。同店では売上の一部をNPO法人に寄付するため、登録するだけで環境支援につながるとしている。数千人の登録を目指していく。
 
また、入口付近には冷蔵ケースを設置し、自由に持ち帰ってもらうフードシェアリングサービスも実施しており、「今後は地域を巻き込んだ活動をしたい」と展望を語る。近隣の飲食店に声をかけ、フードロスとなる食材を持ち寄ってもらうことも想定している。
 
〈大豆油糧日報2020年9月3日付〉