食品業界“2020年新人賞”は大豆ミートか、全方位で展開、脇役から主役を張れる存在に

大豆ミート、全方位で展開、脇役から主役を張れる存在に(写真はスーパーの大豆ミートコーナー)
食品業界における2020年の新人賞を選ぶとすれば、大豆ミートがふさわしい。大手メーカーが関連商品を続々と発売し、コンビニ大手3社もオリジナル商品を本格的に投入、イオンも新たなPB(プライベートブランド)で展開し始めた。

大手卸によると、大豆ミートコーナーを展開するスーパーも増えているという。外食ではハンバーガーチェーンがソイパティをラインアップし、ドトールコーヒーも「全粒粉サンド大豆ミート~和風トマトのソース~」を大々的に展開しヒットさせた。「コオロギせんべい」が話題となった無印良品でも本格的に取り扱いを開始するなど、全方位で展開がなされ、目に留まる機会が格段に高まっている。何より、昔から畜肉製品の加工原料として大豆たん白を使ってきたハム・ソーメーカーが家庭用で本格参入したことは、大豆ミートが脇役から主役を張れる存在となったことを象徴する出来事だ。

大豆ミートを中心とした植物性食品が注目されているのは、人口増加による将来的な食糧危機の解決に繋がる期待や、畜肉と比べて環境負荷が少ないこと、ヘルシーさなどポジティブなイメージが定着してきたことが挙げられる。また、技術の向上もあって、従来のおいしくない、大豆臭いといったネガティブなイメージが薄れてきたことも大きい。

これまではどちらかといえば、訪日外国人のヴィーガンやベジタリアン向けの需要が大きかったが、新型コロナウイルスの感染拡大で、頼みのインバウンドは激減することになる。

一方で、コロナ禍を機に家庭用の注目が高まった。4月には賞味期限の長さや使えるメニューのバリエーションが豊富なことから注目が集まり、マルコメの大豆ミート商品は品薄状態が続いた。

さらには、「コロナの影響で健康意識が高くなっていることはアンケートでも確認できる」(伊藤忠食品)というように、健康志向の高まりも需要拡大の追い風となった。

日本アクセスからも、「参入企業も増えてきた。それに応じて小売業も興味を持つバイヤーが増えコーナー化する売場も増えた。健康イメージから植物性を求める消費者が増え、ヨーグルトやチーズなど、乳製品でも動物性から植物性に意識が切り替わっている」と、売り手、買い手ともに健康意識の高まりが急成長の要因と指摘する。

〈動物性か植物性の二択ではなく、畜肉とのダブル主演の方向性も〉
冒頭述べたようにプレーヤーの急増や、コーナー化された売場が増えてきたことで身近な存在となったが、一過性のブームに終わらず、今後も定着できるかが重要だ。多くの企業はおいしさがカギと口を揃えるが、畜肉に比べてうま味成分や油脂分が少なく、代替肉の立場を脱却できるかは、今後の各社の技術革新に期待したいところだ。

また、動物性か植物性かの二択ではなく、健康目的から無理せず肉を食べない選択肢を持ちたいフレキシタリアンをターゲットに据えるとしているメーカーもあるが、ダブル主演という方向性もありだろう。

発芽大豆を用いた植物肉「ミラクルミート」が注目されるベンチャー企業のDAIZは、「将来的に世界人口が100億人に迫ると畜肉が足りなくなる。畜肉に『ミラクルミート』を混ぜれば、畜肉とほぼ同じおいしさを味わえる人が増える」と、畜産との共存を図っていく考えだ。

大手卸の担当者も、「海外では大豆ミートと畜肉を半々で調合したハイブリッド型のプラントベースフードも登場している。100%大豆ミートである必要はない。今後はおいしいとこ取りではないが、大豆のうま味と畜肉のうま味をかけ合わせた新しい食品も出てくるのでは」と見通す。

〈大豆油糧日報2020年12月4日付〉