兼松グループ、いち早くDAIZと商品開発を、経営資源を最大限有効活用/プロジェクトチームインタビュー

兼松執行役員畜産部門長・橋本徹氏と、兼松食品企画部新規事業室 室長・小山大地氏
兼松グループ(兼松、兼松食品)は12月10日、植物肉「ミラクルミート」を開発・製造するDAIZと資本業務提携を発表した。

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DAIZは2020年1月のニチレイフーズを皮切りに、12月には同グループ、味の素、丸紅といった企業と立て続けに資本業務提携したことで注目を集めている。その中でも同グループは大豆と畜産でトップシェアを持ち、原料調達から最終製品販売までのバリューチェーンを構築する総合力が強みだ。

資本提携までの経緯や狙い、今後の展開について、兼松の橋本徹執行役員畜産部門長と、兼松食品企画部新規事業室の小山大地室長に話を聞いた。

兼松グループでは2019年冬に、橋本部門長や小山室長ら5人でプロジェクトチームがスタートした。ニチレイフーズの出資がDAIZに対する注目を集めるきっかけとなったが、同グループは前身のDAIZエナジーの時から、いち早く商品開発などを行っていた。

今ではプロジェクトチームは100人以上の規模で、兼松グループとして一大プロジェクトになっており、複数の業態、お客とともに、植物肉の発展のために取り組みを行っているという。

橋本部門長は、「『ミラクルミート』は兼松グループの食料、畜産、食品すべての部門が関係しており、経営資源を最大限有効活用できる。当社は大豆、畜産でトップシェアを持っており、両方のバリューチェーンを活かして展開できるという点では親和性が非常に高い。食品関係のお客を有し、販売先のノウハウがある。また、兼松食品には開発部隊があり、加工品の開発もできる。海外の販売網も当然ある。大豆の販売だけでなく、代替肉として肉の販売も行っていける」とシナジー効果を期待する。

〈「ミラクルミート」を食べると思わず笑う、より肉に近づけるため研究〉
開発課で3年ほど植物肉の研究をしていたという小山室長は、従来の植物肉は味やにおいに課題があり、肉としての再現性がなかったというが、「『ミラクルミート』を一口食べると皆さん思わず笑う。私も同じで肉としか思えなかった」と振り返る。植物肉の試食を繰り返している小売大手や外食などで加工品を手掛けている人も、「ミラクルミート」には驚くという。

日本の植物たん白市場では、畜肉製品の価格を下げる時に加えるという使われ方をしていたとするが、「DAIZの『ミラクルミート』は初めから植物肉を作るためだけに大豆を使っているので、おいしさが全く違う。それまでの大豆たん白とは全く別物」と強調する。

橋本部門長は、「肉の市場は数兆円規模となる。そのうちの1%でも植物肉に変わったと考えると、市場規模は大きい」と期待する。また、畜産のみならず、水産の代替品も登場しているが、乱獲などで減少する水産資源の代替商品への展開も期待できるとしている。

海外展開も見据える。橋本部門長は、「グローバルな形で供給していくことは元々の仕事の一つ。日本の価値あるものを海外に広めていく」と意気込む。小山室長は、「日本は資源が特にあるわけではない。一方、国策では30年に農林水産物、食品の輸出金額5兆円を掲げているが、『ミラクルミート』は1つの柱にできるではないか」と評価する。

「ミラクルミート」の改良にも余念がない。小山室長は、「ほぼ毎日のように要望を伝えて、改良してもらっている。より肉感を出す、ジューシー感を出すなどは、加工技術者としてのこちらの課題で、より肉に近づけるため研究している。ベストではなく、まだまだ改良の余地があり、日々おいしくなっている。われわれとしては10を最高とすると、まだ折り返しの5もいっていない」と、さらなる品質向上を目指している。

兼松テストキッチン

〈大豆油糧日報2020年12月25日付〉