製油・加工油脂メーカーが相次ぎ値上げ発表、大豆・菜種・パーム油の高騰が影響

製油・加工油脂メーカーが相次ぎ値上げ発表(画像はイメージ)
原料価格の歴史的な一斉高騰を受け、製油メーカー大手3社から家庭用・業務用油脂の価格改定が発表された。発表の先陣を切った昭和産業は3月1日納品分から、4月1日からは日清オイリオグループとJ-オイルミルズが続き、中堅メーカーの理研農産化工も同時期から改定する。改定額は、日清オイリオグループが20円/kg以上、斗缶で300円以上、それ以外のメーカーは30円/kg以上、斗缶で500円以上の値上げとなる。

また、食用加工油脂メーカーもコスト増の影響は大きく、2月1日にはミヨシ油脂が、2月2日にはカネカが値上げを発表するなど、油脂関連業界は、コロナ禍での困難な価格交渉という難しい課題に直面している。

シカゴ大豆相場は1月中旬、6年半ぶりに当限$14の高値を付けた。主要供給元である米国産の大豆は天候不順による生育悪化で減産となり、7年ぶりに需給がひっ迫していることに加え、生育中の南米産の大豆も、ラニーニャ現象による乾燥で減産が懸念されている。さらには、新型コロナやアフリカ豚熱の影響から回復基調にある中国の需要が旺盛で、大豆の年間輸入量は1億トンと過去最高となり、世界大豆の期末在庫が減少する見込みとなった。これらの要因から、現在も$13台の高値で推移している。

菜種についても8年半ぶりの高値となった。メインのカナダ菜種は夏場の高温で生産量が伸びず、EU諸国の減産による輸出増加により、原料価格が上昇している。さらに品質についても、2020年に比べて油分が低い状況となっている。

パーム油も10年ぶりの高値水準となっている。こちらは生産地の天候不順による減産懸念、新型コロナによる労働者不足、中国やインドなどの旺盛な需要などを背景としたものだ。

大豆油や菜種油、パーム油が主要原料のマーガリンなどを製造する加工油脂メーカーも状況は同じだ。

ミヨシ油脂は3月1日納入分から、マーガリン類、ショートニング類の価格改定を行う。マーガリン類は25円/kg以上、ショートニング類は30円/kg以上となる。カネカも3月1日出荷分から価格改定を行う。こちらはマーガリン製品が25円kg以上、ショートニング製品が28円/kg以上、ファストスプレッド・バタークリーム製品19円/kg以上の値上げとなる。コスト高の事情は大きく変わらないほかの加工油脂メーカーも価格改定を発表する可能性は高いと見られる。

〈外食はコロナ禍で大きな打撃も、安全・安心な製品の安定供給のためやむを得ず〉
川上側の厳しいコスト事情の一方で、業務用、とりわけ外食産業も大きな打撃を受けている。日本フードサービス協会が発表した2020年12月単月の外食産業市場動向調査では外食全体の売上は15.5%減と落ち込んでいる。2020年年間(1〜12月)で見ると、新型コロナの影響は特に3月以降に深刻な影響を与え、外食全体の売上前年比は15.1%減と、1994年の調査開始以来、最大の下げ幅となった。

そのような環境下、新型コロナの第3波により、1月7日には1都3県で再度の緊急事態宣言を発出され、13日には11都府県に対象を拡大、外出自粛や20時までの営業時間短縮要請で、外食店はより一層大きな影響を受けている。

2月2日には、感染拡大の勢いが収束に向かわないことから、栃木県を除く10都府県で緊急事態宣言の1カ月延長が正式に決まった。製油メーカー各社は2020年も原料相場の高止まり、人件費、物流費、資材費の高騰などから4月に値上げを行っているが、製油メーカーからは「4月の価格改定は、丁寧な説明により一定の理解を得られたが、新型コロナ感染拡大で外食を中心に大きな痛手を受けたことで価格交渉が難航し、目標価格には届かなかった」との声がもれる。

2020年秋の時点では他メーカーからも、「業務用ユーザーの動向を見ていると、ストレートに言える状況ではない」といった声が聞かれた。今回の値上げは、外食市場でやや回復傾向が見られた2020年秋時点よりもさらに厳しい中での発表となった。

当然、各社とも最大限経営努力を行っているものの、コストアップ分の全てを吸収するのは困難な状況である。安全・安心な品質の製品を安定的に届けるため、やむを得ず価格改定の実施が必要となっている。

〈大豆油糧日報2021年2月5日付〉