東日本大震災から10年、東北の大豆供給担う三倉産業、震災後「新生三倉」として東北産大豆を全国へ

三倉産業 本社社屋
2021年3月11日、東日本大震災から10年となる節目を迎えた。食品産業新聞社では福島、宮城、岩手の3県において、あの未曾有の災害から立ち上がっただけではなく、震災以前にも増して経営を維持・発展させてきた、食品酒類・流通事業者に取材を行った。

本記事では、仙台市に本社を構える、大豆など農産品の加工・卸売業の三倉産業の復興・再起の足取りをたどった上で、今後の将来展望を聞いた。

三倉産業(宮城県仙台市)は、東北の大豆供給に大きな役割を担っている。同社は、東日本大震災により、仙台港に有していた大豆選別工場や倉庫が津波に襲われ、甚大な被害を受けた。震災後、「新生三倉」として、国産大豆の取り組みを強化、東北地区の大豆を全国へ供給することを目指し活動に励んでいる。

震災当時、本社社屋とグループ会社・東日本大豆センター(大豆選別工場、片栗工場)が被災した。本社は若林区卸町に位置し、津波の被害は免れたが、仙台港に保有していた工場、倉庫、サイロは震度6強の地震と高さ6m以上の津波に襲われた。新道剛史取締役は「震災前は、大豆サイロと自社選別ラインを保有し安定供給を心掛けていたが、選別ライン、大豆が壊滅的な状況となり、出荷ができなかった」と当時をふりかえる。

三倉産業は、早急に大豆選別工場の再建の検討に入った。しかし、(海外の)現地選別品のレベルが向上したことや、建設に多額の費用がかかることから止む無く断念した。そして現在は、現地で選別された大豆をコンテナで輸入する体制で安定供給を図っている。

また、「新生三倉」として国産大豆に力を入れ、一大産地である地元・宮城を中心に、東北産大豆の全国への供給を目指している。

特に、三倉産業主催の「クロップツアー」は、生産者と実需者の情報・意見交換、交流の場として、震災後これまで7回開催してきた。2020年は、コロナ禍で止む無く中止としたが、今後も継続していく考えだ。

このほか、「香り豆」など在来種の契約栽培と拡売への取り組みを行っており、「生産者と繋がりを深めながらおいしい大豆の提供を目指している」と話す。2019年に開催された「第5回全国豆腐品評会」では、「香り豆」を原料とした豆腐が「農水大臣賞」「食料産業局長賞」を受賞している。

震災から10年を迎え、三倉産業は「今後も慢心せず、もっと沢山のおいしい大豆を加工メーカー様、そしてその先の消費者様へ届けられるよう努力していきたい」と決意を新たにしている。

〈大豆油糧日報2021年3月11日付〉