相模屋食料・鳥越淳司社長「たん白摂取ブームは大きなチャンス、おつまみ提案を強化」【豆腐業界トップインタビュー】

相模屋食料「ひとり鍋」シリーズ「たんぱく質のとれる濃厚豆乳たっぷりスンドゥブ」
昨今、SDGsへの関心の高まりなどから、プラントベース食品(PBF)が注目されているが、これらが世に浸透していなかった頃から積極的にPBFに取り組んできたのが相模屋食料だ。今期も、PBF含む独自商品を投入し、豆腐市場活性化を図る。
相模屋食料・鳥越淳司社長

相模屋食料・鳥越淳司社長

――今期(2月期)の動向は
 
良好な進捗だ。今夏は猛暑だったことから豆腐の需要が大きかった。消費ニーズはコロナ禍前に戻り、(2020年の内食需要拡大による)素材型の需要は一巡し、昨年ほど買い溜めの傾向も無い。そのような中、当社商品では、「ひとり鍋」シリーズや「おかずやっこ」が好調だ。
 
また、今年注目したのがおつまみ需要の取り込みで、結果的に大成功した。豆腐とお酒は一緒に食されることが多いが、スーパーの同時購買率を見ると、同時に購入する人はほぼいない。ニーズがあるのに提案出来ていなかった。おつまみには豆腐だと言ってもらえるように、新発売したのが「おつまみやっこ」(冷やっこ専用豆腐とたれのセット)であり、これがヒットした。
 
――秋冬新商品は
 
揚げ物をおつまみ用に仕立てた「がんも串」、「厚あげ串」を新発売した。串に刺したがんも、厚あげをレンジアップし、それぞれ添付のわさび、あおさダレで食べて頂く商品だ。秋冬におけるおつまみに重要なポイントは咀嚼回数だと考え、「がんも串」、「厚あげ串」ともに、ぎゅっと身をつめ、噛むほどおいしさを感じることが出来る、他にない商品となっている。
 
〈和製フードテックで「肉肉しいがんも」新発売、京都タンパクを西の拠点に〉
――PBFについて

 
PBF、植物肉がますます広がりを見せている。大豆はもともとPBFであり、日本には古来よりがんもがあった。そこで新発売したのが「肉肉しいがんも」だ。手でこねて身をつめ、肉粒感を出す製法で製造しており、「和製フードテック」をアピールしたい。パッケージに記載している「イノセントミート」の「イノセント」は罪のないという意味で、ヘルシーで罪悪感なく食べられ、原料の大豆は地球環境への負荷が少なく罪のないミートだと訴求していきたい。
 
――そのほか取り組みは
 
パッケージにたん白質量を表記している「とうふ麺」は、昨年対比で2倍以上伸長している。ダイエットやヘルシーというと、糖質やカロリーなど何らかカットするものが多く、たん白質のように「プラス」するものはなかなかない。また、たん白質が摂れる食品はおいしいイメージがあり、選択してもらえる。そこで、「ひとり鍋」、「とうふサラダ」、「とうふグラタン」について、「たんぱく質のとれる」おとうふ惣菜シリーズにバージョンアップさせた。
 
たん白質摂取、PBFの観点からも、豆腐は注目食材であり、大きなチャンスが目の前にある。
 
――グループ会社の進捗は
 
2019年9月にグループ入りした丸山商店(福岡)は完全黒字化を果たしており、あとは債務超過解消に向け進める。
 
京都タンパクを西の拠点にすべく、この2年で約19億の投資を行っている。また、春夏新商品として、中が半熟食感の揚げ出し豆腐を発売しかなり好評を得た。秋冬に更なる需要増が予想され、揚げ出し専用ラインを設置し、京都タンパクの看板商品にしていきたい。
 
――SDGsの取り組みは
 
おからパウダーを拡大させるほか、おからとプラスチックを混合させた植木鉢などの試作も行っている。産学連携で研究も進めている。今冬おからの乾燥機を導入し、おからの再利用を進める。消費者の意識がSDGsに向いており、トレー付き商品の「ひとり鍋」について、トレーを添付しないタイプの「ひとり鍋」も発売した。
 
――原料高騰について
 
大豆も食用油価格も上昇している。現時点で具体的に決めているわけではないが、状況を見極めて対応を決定していきたい。
 
〈大豆油糧日報2021年9月22日付〉