日本向け穀物輸送の3割近くの用船仲介、独自の海上運賃相場を発表/エクセノヤマミズ

エクセノヤマミズ 穀物部の宮田恭副部長
エクセノヤマミズ(東京都千代田区)は、国内の大手商社やJA全農と船会社を繋ぎ、米国ニューオリンズ港やブラジルから大豆やトウモロコシ、カナダや米国、豪州から菜種、小麦などの穀物輸送契約を仲介している。

日本向けの穀物輸送の3割近くに同社が携わっており、世界で最も多くニューオリンズ港と日本間の取引を行っている知見を活かし、毎週木曜に、穀物取引の指標となっている独自の海上運賃相場を発表している。また、タイムチャーター(定期用船契約)の部署で、常時情報取集を行っているのも強みだ。三井物産を経て、2008年から大豆とトウモロコシの取引を担う穀物部の宮田恭副部長は、「日本のブローカーの中では総合的な情報量はかなり多い」と強調する。

エクセノヤマミズは1947年の創業時から、貨物輸送契約のブローカー(仲介人)として世界中の穀物輸送を手掛けてきた。具体的な事業内容は、荷主から必要な船腹のサイズや積み揚げ地などの情報を受け取り、それを元に運航船社と相談し、適切な運賃を決めるというもの。国内の大手商社やJA全農、世界中の船社と取引を行っており、大豆、トウモロコシ、小麦、菜種における日本国内への総輸入量の実に3割近くが、同社仲介の成約によるものだという。

同社は日本で唯一の「バルチック海運取引所」パネルブローカーだ。毎週木曜日に「山水インデックス」として、米国ニューオリンズ港から日本向けのばら積み穀物のスポット運賃($/t) を、スプラマックス・ウルトラマックス型で発表している。海上運賃はしっかりとした相場が立っておらず、エクセノヤマミズが発表している数字が穀物取引の指標として、契約時の目安にもなっているといい、「それなりのプレゼンスはある」と胸を張る。

〈タイムチャーター部には船形別のプロが情報収集、三国間輸送も積極的に関わる〉
海上物流の混乱から、引き続き食品用大豆を輸入するコンテナ船は手配できない状況が続いているが、宮田副部長によると、搾油用大豆のばら積み船に関しては、原油価格が上がってバンカー(燃料)価格は上がっているものの、現状は特に大きな混乱は見られないという。

ニューオリンズ港と日本間の海上運賃は、直近の6月第3週は$68だったが、2000年頃には$20台だったという。「この10年のアベレージでは$40台で決めた契約が多く、$70近くというのは高い。原油価格は、ウクライナ・ロシア紛争が終わっても急に下がることはない」と見通す。

ブラジルと日本間の海上輸送はインドフリーの船を使う場合90~100日要し、最も輸送距離が長い。バンカーは2,000t以上必要だが、「原油が$1上がるとバンカーが約$7上がる」という。ニューオリンズ港と日本間の輸送日数は約30日で、バンカーは1,000tほど必要になる。一方で、「船のマーケットは一時期に比べ落ち着いており、原油が下がると海上運賃は下がる可能性はある」と説明する。

エクセノヤマミズの強みは、タイムチャーターの部署があり、パナマックスやハンディマックスなどの船形別に選任のトレーダーが計10人ほど所属し、毎日スポット船の情報収集を行っていることだ。「船形別のプロがいるため、穀物しか取り扱っていないブローカーより多くのことができる。日本はもちろんシンガポール、韓国、香港、中国、欧州など世界各国の船会社と取引がある」と述べる。

ばら積み船は、日本、韓国、中国で約8割が造られているという。数年に1度、ドックで点検が必要になるが、例えば大西洋にいる船の点検時期が迫ってきた場合、何も積まずに戻るよりも、大豆やトウモロコシを積んで戻った方が当然合理的だ。「極東に戻したい船があれば、マーケットより安価に交渉できる事もある。付き合っている船会社が多いと有利な条件で入札できる」というように、ドックが近づき、日本に戻す必要のある船を探すことも可能だという。

今後の事業展開について、「日本向けの穀物取引は、人口減少により減っていく見通しだ。日本向け取扱量は維持しつつ、日本の商社が行っている中国、東南アジア向けの三国間輸送にも積極的に関わっていきたい」と述べる。

〈大豆油糧日報2022年6月24日付〉