全農と日清食品が米の物流で包括的連携、カップライス原料の安定供給・調達に取り組む

全農・高尾雅之常務と、日清食品・深井雅裕取締役
全農・高尾雅之常務と、日清食品・深井雅裕取締役

全農と日清食品(株)(安藤徳隆社長)は10月31日、原料供給・物流の包括的連携の調印式を開いた。

具体的な取り組みは、日清食品のカップライスの原料である加工用米の安定供給・調達の取り組みと、共同輸送だ。

両者の米の取引は約15年にわたる。日清食品の「カレーメシ」に代表されるカップライス向けの加工用米を全農が供給してきた。日清食品の深井取締役は「昨年にカレーメシは100億円の売上を達成し、今後も生産を拡大させていきたい。そのためには原料米の安定供給が不可欠」とする。

今回の調印では全農がカップライス向けの加工用米の「中長期的・安定的な供給」を行うことを締結。また、「他の国産農畜産物の供給の取り組みを開始する」とした。

共同輸送ではラウンド輸送を取り入れる。ラウンド輸送は荷降ろし地点で別の貨物を積み込み、出発地に戻ることで空車時間を最小限にする輸送形態だ。すでに2地域での運用が決まっている。これまで、日清食品は物流の水平統合(飲料など他製品との共同物流)を行ってきたが、今回は垂直物流(原料調達・製品出荷を組み合わせた共同物流)に取り組む。

〈岩手~茨城間〉

▽岩手の単協・県本部の倉庫で玄米を積み込み→▽関東の精米工場(千葉・埼玉などの全農が取引する米穀卸)に玄米を輸送→▽玄米を降ろしたトラックが茨城の日清食品関東工場(茨城県取手市)でカップヌードルなどを積載→▽日清食品が利用する岩手の製品倉庫へ輸送→▽岩手の単協・県本部の倉庫で玄米を積み込み――というサイクルだ。従来と比較してトラック1台当たりの実車率(走行距離のうち実際に貨物を積載して走行した距離の比率)が12%高まると試算する。4月に実証試験を行い、10月からは週2便の運行を開始している。

ラウンド輸送〈岩手~茨城間〉
ラウンド輸送〈岩手~茨城間〉

〈福岡~山口間〉

▽福岡の県本部の精米工場で加工用米(精米)を積み込み→▽日清食品下関工場(山口県下関市)に精米を配送・荷降ろし→▽下関工場でカップライスやカップヌードルなどを積載→▽日清食品が利用する福岡の製品倉庫へ輸送→▽福岡の県本部の精米工場で加工用米(精米)を積み込み――というサイクル。

下関工場での原料荷降ろし・製品積み込みにおける、横移動がゼロになるのがこのサイクルの特徴だ。また、従来はフレコンやパレットなどの物流資材の返却のため、別便を用意する必要があったが、このサイクルでは一部区間で製品と一緒に輸送できる。

これらにより、従来と比べてトラック積載率が約9%向上し、CO2削減量も約17%削減できると試算する。8月に実証試験を実施。11月から週4~5便を稼働させる予定だ。

ラウンド輸送〈福岡~山口間〉
ラウンド輸送〈福岡~山口間〉

今後の展望について全農の高尾常務は「野菜のように季節によって物流量が大きく変動しないことから、まずは米からスタートする。検証を重ねて野菜や畜産にも広げたい。また、次のステップとして鉄道を利用した共同配送も検討中」とした。

〈米麦日報2023年11月1日付〉

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