神明HD×舞台ファーム、業務提携第一弾は営農型ソーラーシェアリングの共同実証

◆ほ場のパネルで植物工場の電力の8割賄う、売電は米生産者の副収入
神明ホールディングス(藤尾益雄社長)は7月29日、レタスなどの野菜、米などを生産する農業法人舞台ファーム(仙台市、針生信夫社長)と業務提携を締結。第一弾の取り組みとして、舞台ファームが運営する次世代型植物工場(レタス)の美里グリーンベース(宮城県美里町)に隣接するほ場、約3.9haに営農型ソーラーシェアリングの共同実証に取り組む。
農業生産者が太陽光発電で副収入を得られるほか、発電した電力を農業活動に供給することで、農業者の所得向上と地域経済への貢献を両立する。8月下旬に着工、来年2月完成、3月には通電開始を目指す。
共同実証で得られた電力による、美里グリーンベースの使用電力の約8割を賄い、EVステーションを設置することで、周辺農家への電力供給・スマート農業推進を実施するほか、地震などの災害時には地域住民にも電力を供給するとしている。実証実験後は、得られたノウハウや技術を基盤に、新たな営農モデルを構築し、両社で全国展開を図る考えだ。
同日、両社は会見を開き、神明HDの藤尾社長は「両社が培った知見と技術を結集し、日本農業が直面する課題解決のため、食と農の持続可能なシステムの構築に向けて、挑戦していく」
「エネルギー関連で業務提携は初めてになる。ほ場の上にソーラーパネルを設置することに興味をもった。生産者が作物以外に収入を得られる副収入になりうる。全国に展開する際には、建設コストや農水省とのつながりも活かして、補助事業などを受けられるようにしたい。取り組む時に農家負担がかからないようにしたい」
「今回は資本関係はなく、業務提携となった。今後は状況に応じて両社のジョイントベンチャーの可能性もあるし、その先に農業が儲かるとなれば上場することもあるかもしれない」などと展望を語った。
舞台ファームの針生社長は、「今回のソーラーシェアリングのほ場でどの程度、米が作れるか。約33%遮光してどの程度の品質になるか、遮光率を変えるとどうなるかも研究していく」「米を作りながらエネルギーを作りたい。ロボットの食料(エネルギー)を作り、そのロボットが人間の食料を作る」などと話した。
両者はそのほかにも▽米の生産・安定供給に向けた取り組み▽施設栽培による安定供給の取り組み▽農業人材の育成・派遣▽農業生産・事業継承支援▽スマート農業の推進・普及――に取り組む。
【米の生産・安定供給】神明HDはグループ会社の神明育種研究所で品種開発取り組み、ふじゆたか、大粒ダイヤなどを生産者に提供。舞台ファームは、高温耐性品種のにじのきらめきの種子を生産し、今年1月から販売を開始した。両社の知見を融合し、昨今の気象環境にも対応可能で、高品質安定収量が見込める種子提供、安定販路を通じた生産者の経営安定化を図る。
【施設栽培による安定供給】青果事業にも取り組む神明HDと、屋内レタス生産を手掛ける舞台ファームの協業により、美里グリーンベースのノウハウの全国展開、神明グループの流通ネットワークとの連携を検討。
【農業人材の育成・派遣】農業生産現場で活躍できる人材育成に取り組み、農業生産事業の強化、人材派遣による生産者支援に取り組む。
【農業生産・事業継承支援】経営改善や事業継承に課題を抱える生産者を支える、新たな支援体制の構築を進める。
【スマート農業の推進・普及】今回の営農型ソーラーシェアリング施設での共同実証を通じ、電力を鍵としたスマート農業の先進技術の導入を検討し、持続可能かつ競争力のある農業の実現に向けて、生産現場の改革と食料生産の安定化を目指す。
〈米麦日報 7月31日付〉