シチュー市場の推移順調 “ご飯と好相性”着実に浸透、家族全員が満足できるメニューへ

家庭用ルウシチュー市場はハウス食品・エスビー食品・江崎グリコの上位3社でシェア9割以上を占める成熟市場(画像はイメージ)
〈ハロウィンが新たな需要の山場に〉
今年のシチュー導入期(初秋)は、天候不順やシェア上位社から大型新商品が投入された昨シーズンの反動が見られた。ただ6月から8月の実績では前年を2%程度上回り、トップシェアのハウス食品が10月に入って増勢基調に転じたこともあり、シチュー市場は順調に推移している。背景には、近年ではクリスマスや大寒の最需要期前の10月に、ハロウィンがシチューの新たな需要の山場として確立されていることがある。流通サイドも商機を逃すまいと店頭化を進める。今年もシチュー市場はハロウィン商戦に向け、おおいに盛り上がりをみせる。

家庭用ルウシチュー市場は、小売ベースで年間160億円から190億円規模で推移し、上位3社でシェア9割以上を占める極めて安定した成熟市場となっている。

2017年度の市場規模は161億円となり、前年並みで着地した。うちクリームシチューは130億円、ビーフシチューは24億円、その他シチューは7億円(当社推計)。市場における金額シェアについては年度により多少の変動はあるが、ハウス食品70%、エスビー食品19~20%、江崎グリコ5~7%、その他4~5%でほぼ固まっている。

国内シチュー市場は、2012年度に小売ベース200億円の大台を割って以降、長引く残暑による店頭化の遅れや安価品の台頭、調理の外部委託化が拡大したことなど、さまざまな要因で踊り場から抜け出せずにいた。

ハウス食品では、大人の男性がシチューメニューに物足りなさを感じていることがシチュー離れの一因とし、2000年以降すすめてきた野菜摂取の提案に加え、大人の男性も満足するシチューの食べ方提案を一昨年から強化。この一環で昨シーズンは、シチューをごはんにかけるという食べ方提案をそのまま商品化した「シチューオンライス」を上市した。ハヤシライスのように、気温の上下に左右されない強みを生かし、新たなサブカテゴリーの創出に挑むもの。折からのワンプレート志向の潮流にも合致し、同社シチュー実績に寄与するとともに市場活性化にも貢献している。

シェア上位3社の商品(ハウス食品「シチューオンライス カレークリームソース」、エスビー食品「濃いシチュー ほくほくパンプキン」、江崎グリコ「クレアおばさんのクリームシチュー」)

シェア上位3社の商品(ハウス食品「シチューオンライス カレークリームソース」、エスビー食品「濃いシチュー ほくほくパンプキン」、江崎グリコ「クレアおばさんのクリームシチュー」)

シチューメニューの食卓登場頻度を上げていくには、「シチューはごはんに合う」という認識を浸透させていくことが必要だ。したがって、シチューとごはんの相性に着目した販促企画や品質改良は、シチューメーカー各社が長年にわたり継続的に行っている。店頭では、レンジ調理に対応した包装米飯とルウシチューが、特売の目玉商品としてあわせて陳列される機会も増え、シチューとごはんの相性のよさは着実に浸透しはじめている。

近年では、ルウシチューの売れ筋価格帯は各社が注力している実勢価格200円前後の中価格帯商品がボリュームゾーンとなり、これを150円前後の低価格帯商品が下支えする構図に変わってきた。依然として消費の二極化はあるものの、シチューにおいて消費者の価格受容性は高まっている。今後も人口構成や世帯人数の変化とあいまって、多少高くても高質な商品を求める消費者は着実に増えていくだろう。同時に、「シチューは家庭における子ども向けメニュー」というイメージは薄れ、「シチューは家族全員が満足できるメニュー」になっていくと思われる。

今シーズンも主要3社では、シチューメニューの食卓登場頻度を上げるため、さまざまな施策を実施する。

ハロウィンを皮切りに、大寒やクリスマスなど催事連動型の店頭展開を繰り広げるほか、生鮮売り場やワイン売り場など、さまざまな売り場で関連販売を実施。魅力ある店頭訴求により、シチューメニュー決定を促し、買い上げ点数の向上を実現するねらいだ。

〈食品産業新聞 2018年10月15日付より〉