パーム油調達基準で認証制度ヒアリング-東京五輪組織委・持続可能WG

大豆油糧日報2017年12月6日付
東京五輪組織委員会は4日、持続可能な調達WG(ワーキンググループ)を都内で開き、パーム油の調達基準について審議した。今回はパーム油認証制度に関するヒアリングが行われ、生産国のインドネシア政府主導のISPO、同じくマレーシア政府主導のMSPO、民間団体によるRSPO、それぞれの関係者が概要を説明した。

ISPOについては、同国経済調整省のウィルストラ・ダニー氏が説明し、同国にとってパーム油は戦略的役割を担う存在であると共に、経済・社会・環境の3つの要素の調整を図ることが重要だと述べた。パーム油は昨年、$180億の外貨収入を稼いだ輸出商品であると共に、国内の食用油需要、バイオ燃料需要をまかなうほか、1,620万人の雇用を創出していると説明した。さらに、同国パーム農地の4割は小規模農家が所有しており、貧困対策や地方経済振興にも寄与しているとした。一方で、国際市場での競争力維持や、EUなどの輸入国の要求に応えるため、パーム油産業への統制力強化と、透明性の改善が必要だと述べた。

同国では現在、ISPOについては最優先課題として、トレーサビリティと透明性に関する新しい基準を策定に取り組むとしている。新基準では、パーム油産業に関わる企業・生産者すべてに認証を義務化すると共に、違反者には罰則を科す。経費は企業と生産者が負担するが、小規模農家には政府が助成する。また、認証料の基準価格は政府が決めるとしている。

〈MSPOは18~19年に認証義務化、RSPOはネット取引が拡大傾向〉
次いでMSPOについては、マレーシアパーム油庁のアーメド・クシャイリ長官が説明した。クシャイリ長官は同国パーム油産業の現状について、574万ha のパーム農地のうち6割を大規模プランテーション、4割を小規模農家が所有していることや、近年ではパーム農地の拡大ペースはスローダウンしており、92年のリオ・サミットで国土の森林率50%以上を維持する取り決めのとおり、16年現在の森林率は55%だと説明した。その上でクシャイリ長官はインドネシア同様にパーム油産業の重要性を強調すると共に、生産・物流や労働、環境保全に関して法律で網羅的に規制していると説明した。

MSPOについては国連の「持続可能な開発目標(SDG)」に沿った形で、環境保全と生活水準の向上、パーム油産業の持続的発展、小規模農家の保護を主な目標としており、また、これまでは任意だったが、18年末~19年夏にかけて関係企業を義務化、19年末には小規模農家も義務化するスケジュールを説明した。義務化に伴い、小規模農家に対しては、認証経費や技術訓練、設備などの助成を行うとしており、これによりユーザーへの転嫁コストの削減も見込まれると説明した。

RSPOについては、サステナビリティ経営の支援を行っている、一般社団法人SusCon(サスコン)の粟野美佳子代表理事が最近の動向などを説明した。粟野氏は運営方法について、生産者や加工業者、非営利団体の関係者で構成される理事会で議案を策定し、それを正会員による総会で議決することで意思決定しており、事務局が運営には直接関与していないことを強調した。

認証パーム油の取引については、近年は「パームトレース」と呼ばれるサイトを通じたネット取引が拡大しているとした上で、小規模農家はネットを通じた取引によるコスト効果に加え、同サイトで取引価格を把握することができるので、有利になるとの見解を示した。また、透明性についても、監査報告書をネットで公開していることに加え、違反者に対する厳正な対処、適宜の規則見直しなどにより担保していると説明した。

質疑応答では、委員からRSPOの認証料の価格が分かりにくいとの質問に対し、粟野氏は「RSPOは認証制度であるが、一つのブランドであり、取引においてどこまで(透明性が)必要なのか」と述べ、認証料は商取引上の交渉で決まるもの、との見解を示した。同WGではパーム油の調達基準策定について、今月中に意見交換の会合を予定しているほか、来年1月中に意見募集の手続きにかけることを予定している。

〈大豆油糧日報2017年12月6日付より〉