菱熱工業 大豆ミートの試作サポート事業が好調、ノウハウ提供「手厚い」とリピート

菱熱工業「大豆ミートプロセッサー」の出口台(吐出部)
菱熱工業(東京都大田区)の大豆ミート製造のノウハウを提供する「試作サポート」事業が好調だ。2021年8月にスタートしてから、すでに30社以上の実績があり、年間1000万円の目標を上回る見込みだ。添加物や油脂を取り扱う企業など、食品関連会社の利用が多いという。

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菱熱工業は建設業や生産設備エンジニアリングを手掛け、機械メーカーでもあるが、新規事業も積極的に立ち上げている。その際、新たなプロジェクトを立ち上げた社員がリーダーを務め、必要な人材を社内の各ドメインから集めることになるという。大豆ミートのプロジェクトは、2020年春に立ち上げられた。リーダーを務めるプラントドメインの近藤勢氏は、「調べると、大豆ミートがおいしくないのが課題だと感じた。他社から仕入れた原料だと、モノが決まっているので、加工しても限界がある。内製化すればおいしくなると考え、機械の開発を行った。これから大豆ミートに参入したいという企業は増えてくる。機械の販売はもちろん、総合的な提案でプロジェクトを進めている」と説明する。

「試作サポート」事業は、菱熱工業が2021年に開発した大豆ミート製造に特化した専用機「大豆ミートプロセッサー」を使い、大豆ミートの試作を自由に行えるというものだ。1回当たり15万円だが、月4回までのお得なセットプランが好評だという。試作に必要な粉末原料は、自社で用意する必要がある。近藤氏は、「まずはラボを見たいというお客が多い。機械が設置された試作できる場所は少なく、形にしていく際にノウハウを提供する企業も国内にはほぼないため、『手厚い』とリピートされている」と説明する。

〈「大豆ミートプロセッサー」の出口部を研究、丸大豆からも作る方法ももう少しで開発〉 
菱熱工業ではこれまで、大豆をはじめ約30種類の粉末原料を試作している。大豆ミートはすでに扱っている企業が多いため、「大豆から離れて試作したいというところが多い。植物性たん白に限らず、水産物の粉末を持ち込むところもある。肉をパウダー状にして、大豆とハイブリッドにするお客もいる」と説明する。

今年は「大豆ミートプロセッサー」の販売と「試作サポート」事業は継続していく考えだが、「もう1つ柱をつくりたい」と述べる。例えば、大豆ミートを手掛けたいと希望するところに菱熱工業が人材を送り込み、一緒にプロジェクトを立ち上げることや、OEM(相手先商標による受託製造)先を探すユーザーをマッチングさせることなども検討しているという。

素材については、「豆腐を作る際に生じるおからを使えると面白い。葉物野菜や工場で出てくる副産物を使うなど、食品ロスを減らす上で研究したいというお客もいる」と述べる。また、「肉に捉われる必要はない。おつまみ、菓子、海産物でもいい。幅広く広げていきたい」と展望を語る。

「大豆ミートプロセッサー」の出口台(吐出部)の研究も必要不可欠だとする。大豆ミートが押し出されてくる出口台の形状により、食感や弾力、形状が変わってくる。既存タイプのミンチ、鶏肉、ホルモン、ジャーキー、イカ以外にも、繊維質のより強い弾力のある食感になる出口台を研究しており、2022年のテーマだとしている。

既存タイプのミンチ、鶏肉、ホルモン、ジャーキー、イカ(菱熱工業)

既存タイプのミンチ、鶏肉、ホルモン、ジャーキー、イカ(菱熱工業)

丸大豆から大豆ミートを作る方法も研究中だ。「油分がネックになる。たん白質は物性変化するが、油分が入ると繊維質になるのを阻害して、結着しなくなる。くっつかないので、内部で滑って先端から吹き出てきてしまう。抑える仕組みを研究中だが、すでに結着まで成功しているので、もう少しで開発できる」という。
 
菱熱工業の企業理念は「やりがいと成長」だ。「ビジネスを変え続けることが必要だ。ずっと同じことだと成長せず衰退していく。大豆ミートもどこかでガラリとビジネスを変えないと衰退する。柔軟な頭で臨機応変に世の中の流れに対応していく。ベンチャー企業と同じマインドで取り組みたい」と意気込みを語る。
 
〈大豆油糧日報2022年3月18日付〉