宇田川商店、2024年に創業100周年、油業界の発展に尽力/宇田川公喜社長インタビュー

宇田川商店・宇田川公喜社長
宇田川商店・宇田川公喜社長

1924年に創業した油問屋の宇田川商店(台東区)は2024年に100年企業となる。

宇田川公喜社長は、阪神淡路大震災が起きた1995年1月に同社に入社し、28年間油業界の発展に尽力してきた。35歳の時に父親である先代社長宇田川喜四郎が亡くなり、1999年7月に社長に就任した。専務時代から建値委員会に出席していた東京油問屋市場の理事職もその時に引き継いだ。

副理事長を2年勤めた後、2012年に48歳で理事長に就任する。「当時2期連続はできなかったので、規約を変えて2期4年勤めることになった」と振り返る。2016年からは全国油脂販売業者連合会(全油販連)の会長を3期6年勤めた。

1999年に当時の全油販連館野会長が次世代交流会を立ち上げた。宇田川社長が30代後半の時に「油脂未来研究会」と名称が変わり、現在中心となっている若手メンバーも次々と加わったという。同会は年2回開催していたが、若手の勉強会もスタートした。東京油問屋市場でも毎月勉強会を行い、講師を招いてこめ油、ごま油、ラードなどの油種について学んだという。製油メーカーの工場見学も実施した。当時のメーカー参加者の多くが現在では役員になっている。

次世代交流会で宇田川社長は運営・管理を担っていた。「当時は油の相場も上下していた。一番安い時の斗缶は2,000円を割っていた。シカゴ大豆相場は$4~5だったが、現在はその3倍になっている。為替も80円くらいだった。バルクもキロ70~80円で、廃食用油に至っては5円程だった。廃油は現在70円台に高騰している」と環境の変化について語る。

全油販連は2023年で70周年を迎え、10月24日に記念式典を開催する。農水省の局長から農林水産大臣感謝状の授与が行われる予定だ。

〈太白ごま油の取り扱いの多さが特色、オンラインショップは5店舗展開〉

宇田川商店は2024年に創業100周年を迎える。関東大震災の翌1924年に、伊豆安商店の番頭だった宇田川社長の祖父、宇田川喜三郎氏が独立し、現在スカイツリーがそびえる北十間川に架かる現森橋の袂で植物油の卸売業を始めた。

昭和2年に現在の本社所在地である西浅草に移転している。「油の二次店は次々となくなっていった。台東区でも4~5軒存在していたが全て廃業した。当社が引き継ぎ、飲食店に直接油を売るようになった」と述べる。

当初は豊年製油の商品しか扱っていなかったというが、二次店が廃業した時に商流を引き継ぎ、昭和産業や日清製油の商品も扱うようになった。宇田川社長の入社後には、辻製油やボーソー油脂の取扱いも開始したという。ごま油もかどや製油、竹本油脂、九鬼産業を取り扱うようになった。「太白ごま油をメインの販路を開拓している。洋食屋にこれでカキフライを揚げたらおいしいなどと提案した。当社は太白ごま油の方が取り扱いは多い」と特色を述べる。

「取扱い品目が増えていき、利益率は私が入社した時よりもに上がっているが、人件費は増えている。マネジメントとは経営するとかカッコいい言葉ではなく『やり繰り算段する』という中学の英語教師の言葉を今でも覚えている」。

コンピューター関連の仕事をしていた経験を生かし、約15年前に自社オンラインショップを開設し、小袋ショップを始めた。食用油などを販売している「油屋うだがわ」をはじめ、楽天、ヤフー、Amazonでも販売し、現在5店舗展開しており、売上比率も高まってきたという。例えば輸入ラードが地方の飲食店へ売れているといい、「地方のリアル店舗は淘汰されて減っているのだろう。オンラインの利用者は飲食店の人が多い」と説明する。

100年企業の秘訣を聞くと、「今は無き二次店さんともいい付き合いをしていたので、当社に任せてくれた。新しい取引先、メーカーとのコミュニケーションや人付き合いを大事にしている」というように、現在、全油販連副会長の他にも、浅草防災安全会、東京上野東ライオンズクラブ、民謡藤波会など多くの会長職を務めている。

今後について、「意識を変えていかないと。コロナはいい経験だった。業界の発展に尽くす、健康第一、無病息災を掲げていきたい」と語る。

〈大豆油糧日報2023年10月4日付〉

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