【製油メーカーの業務用戦略】「長徳」酸価抑制を強化しオペレーション提案-Jオイルミルズ

J-オイルミルズは業務用油脂において、「おいしさ」、「健康」、「低負荷」を軸にソリューション提案を行っているが、特に「おいしさ」と「低負荷」に重点を置いている。原料や物流費などの高騰を受け、昨年の10月に続いて、5月から油脂製品の価格改定を実施しているが、これまでユーザーがコストダウンのメリットを享受できるように、独自技術「SUSTEC(サステック)」を採用した長持ち油「長徳」に注力していた。その「長徳」は6月から酸価抑制機能を従来の1割抑制から3割抑制にアップさせ、リニューアル発売する。

同社は以前から「AV‐CHECK」という油の劣化度が一目で分かるツールを取り扱っており、スーパーのバックヤードなどでは酸価の管理手法として使われていた。
伊藤賢也業務用油脂マーケティング部長は、「酸価抑制機能を強化した『長徳』の機能を最大限引き出して使ってもらえるように、それをサポートするオペレーションの提案を合わせることで、おいしさを担保しながら、長く使用してもらい、コストダウンを実現してもらいたい」と述べる。外食ユーザーに対しても提案していたが、大手の利用に留まっていた。「大手以外の幅広い外食店にも提案していくことで、リニューアルした『長徳』のパフォーマンスを活用してもらいたい。長持ち油を使っていても、感覚で油を早く交換してしまうと長持ちのメリットを生かせない。『長徳』を最大限長く使っていただくため、今回のリニューアルに際してオペレーション提案をより一層強化していく」と語る。
◆「ごはんのための米油」「バターフレーバーオイル」特に好調、おいしさデザインも評価
「JOYL PRO」シリーズでは調理油の「JOYL PRO ごはんのための米油」と調味油の「JOYL PRO バターフレーバーオイル」が特に好調だ。「ごはんのための米油」は、米不足で価格が高騰していることから外食ユーザーに重宝されている。釜への付着が減ることでロスが減ることに加え、米が水分をしっかり保持して炊き上げることができるため、おいしく炊き上がるだけでなく重量が増えるとして、歩留まりが上がってコストダウンできる点も好評だ。さらにこめ油との相性で「ご飯がおいしくなる」と好評で、米の品質改善の面でも評価されている。
「バターフレーバーオイル」は、バター価格の高止まりが続いているため、引き続き強いニーズがある。スタンダードなタイプに加えて、発酵バターのような風味、ミルクのような風味の3タイプをそろえており、「ユーザーごとに求める風味の方向性があり、対応できるようにしている」と述べる。
調味油では、昨年秋に炭火焼きの工程を代替できる「JOYL PRO炭火焼き風味オイル」を発売した。業務用スターチ製品「テクスデザイン」シリーズと組み合わせることで効果をより実感してもらえるという。「油脂単品での販売に注力するよりも『おいしさデザイン』の観点から、油脂、テクスチャー素材、アプリケーションを組み合わせて提案している」と述べる。
「おいしさデザイン」に注力して提案する中で、料理のコクを高めて、おいしくすることにこだわった油「美味得徳」や、素材本来の味のうま味、コクを引き上げる「JOYL PROエンハンスオイル」なども、「この半年から1年ほどにかけて、テクスチャー素材と組み合わせることで効果を実感してもらい、評価されている」と説明する。
これまで大手ユーザーへの提案が中心だったが、油脂とテクスチャー素材を使用したアプリケーション提案の知見がたまってきたことから、定型化して大手以外にも提案を広げていくことに取り組んでいるという。
食材コストが高騰する中、コストを抑えながらもおいしさの実現に寄与できるとして、コストダウンをしてもおいしさを向上させたいと望むユーザーにも好評だ。
〈大豆油糧日報 6月5日付〉