J-オイルミルズ・松本征之常務執行役員CCO「炊飯油・バターフレーバーオイル好調、CVSの一部店舗でもSGP採用すすむ」【製油メーカー役員に聞く】

J-オイルミルズ・松本征之常務執行役員CCO
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――上期を振り返って

将来を見据え、当社のみならず国内製油産業にとっても大きな環境の変化となり、メーカーとしてコスト構造の在り方について転換点になる上期だった。構造改革を進めていかないといけないと改めて認識した。

上期の決算は減収減益となり、課題は抱えている。特にコスト環境は厳しく、適正な価格形成をお客様にご理解いただきつつ価格改定を進めたが段階的に留まり、改めて価格形成の難しさを痛感した半年だった。

業務用市況については、当面、堅調に推移していくとみている。外食市場は地域差があるものの、インバウンドの需要は底堅く、中食も調理済み食品といった簡便ニーズのトレンドは今期も変わらない。

コロナ禍で底を打って緩やかな成長は続くという意味で堅調だが、数量ベースではコロナ前の19年までの数値に戻るのは難しいとみている。

当社の施策としても、長持ち油で使用量そのものを減らす方向の提案も進めている。お客様はもちろん社会全体にとっての「低負荷」はメーカーとしての命題で責任を果たしていく。数量を求めるのではなく、お客様にとっての油の価値を下げることなく安心してお使いいただける環境を提供していると考えている。フライヤーの廃油交換や清掃は本当に大変な作業なので、使い勝手の良さへの提案は使命だと考えている。

――好調な商品について

業務用では炊飯油や、バターフレーバーオイルも好調だ。米と同様に、バターも高騰している背景から、コストを抑えつつ素材をおいしく引き立てる点に評価があった。6月にリニューアルした、当社独自技術「SUSTEC(サステック)」を用いた長持ち油「長徳」も数量を伸ばしている。「おいしさ・健康・低負荷」の価値が世の中で必要とされていると改めて認識している。

家庭用は「スマートグリーンパック」(SGP)シリーズが着実に流通での拡大を続けている。オリーブ油を中心に取り扱いが拡大し、売上げも右肩上がりだ。「低負荷」のコンセプトと使いやすさも評価されている。家庭用油脂の中では紙パック領域はまだ限定的で、さらなる拡大を目指す。CVSの一部店舗でもSGPのオリーブ油が採用され始めた。

――価格改定の進捗状況は

10月に入ってから、業務用は価格の実勢化が着実に進んでいる。ただし発表した値上げ幅までには及んでいないのが実情だ。家庭用はさらに及んでいないが、ようやく全国のスーパーやドラッグストアで売価が変わり始めた。

1月からの更なる価格改定を発表しているが、先に発表している値上げ幅までは至っていないので、合わせてご理解いただくよう努める。不足分は実勢化していく必要があり、まずは今年2回目の改定幅を確保したい。

3回目の価格改定について、実施を決めたのは、国内製造の高品質な油を将来も安定的に、お客様へ供給する責任を果たし続けるという大義からだ。

今後の国際環境、油とミールの需要、さまざまなコストの上昇、機械費や工事費までも上がっている中で製造設備への投資も必要だ。そのような見通しを考えた時に、現在の価格決定プロセスや事業収益構造で、将来も安定して製造と供給を続けられるかという危機感がある。価格改定は責任を果たすために必要だと判断した。そのメッセージは出し続けたい。

――下期の取り組みについて

1つは、汎用油の適切な価格形成の理解を進めていく。2つ目は付加価値の領域に注力する。業務用では当社独自技術「SUSTEC」や調味・調理油「JOYL PRO」の更なる育成だ。

次の柱として、今夏には「JOYL PRO 美味得徳こくアップオイル」を発売した。少量添加するだけで肉などの素材のおいしさを引き出す油だ。ハンバーグの調理といった、ひき肉をこねる時に加えることで後味とコクを引き立てる。

チャーハンなどにも幅広く使えて汎用性が高い。お客様は、さまざまなコストが上昇する中、素材のコスト削減とおいしさの維持を両立しないといけない。コストをかけずに味を向上できる製品として次の柱に育てていく。

このほか、「長徳」とITを活用したサービスで、油脂劣化測定など、油の適切な管理を実現する業務支援サービスも確立し、お客様の課題解決を強化していく。

家庭用はSGPに引き続き注力する。また、今秋にはJOYL「AJINOMOTO MCTオイル」も発売した。「健康」の付加価値領域についても伸ばしていきたい。

JOYL「AJINOMOTO ダブルハーフ」は良い製品と自負しているが、使用量を半分にでき、油ハネも半分という特徴の認知が拡がっていない。特徴を理解していただけると支持される商品なので改めて訴求していく。

――最後に下期の抱負を

この下期は次への成長につなげるという位置づけだ。収益のベースが揺らいでいる危機感がある。収益ベースを日々の仕事で堅持していくとともに、付加価値の領域を含めて種まきの仕事にも取り組む。減収減益に下を向くことなく、次の成長に向けて取り組んでいく。

〈大豆油糧日報2025年12月5日付〉

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昭和33年(1958年)1月
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