【不二製油】動物性原料不使用のレトルトカレー「ひとさらのミライ」を商品化
〈大阪公立大と協働、植物性ダシで満足感のあるプラントベースカレーを実現〉
大阪公立大学生活科学部食栄養学科・生活科学研究科の学生らが企画・開発した、動物性原料を一切使用しないレトルトカレー「ひとさらのミライ―学生が考える、地球と人にやさしいカレ― ―」の記者向け試食会が23日、同大学森之宮キャンパスで開かれた。不二製油と協働し、同社の植物性ダシ「MIRA-Dashi(ミラダシ)」を活用して満足感のある味わいを実現した。大阪・関西万博における同社イベントでも試食提供を行い、注目を集めた。11月末から同大学生活協同組合で販売している。価格は1個540円(税込)。
大学側から修士1年の重政美月さんが登壇し、開発の背景を説明した。
重政さんは、「食事は、単に栄養を補うもの、空腹を満たすものではない。誰かと一緒に食べることで自然に会話が生まれ、文化を共有し、言語を超えたコミュニケーションにもなる。料理には、その土地や人々の文化、歴史が詰まっている」と述べ、食の持つ社会的な意味を指摘した。
一方で、「すべての料理が、世界中の誰もが食べられるわけではない。宗教や文化的背景によって食事に制限がある人がいる。イスラム教のハラル、ユダヤ教のコーシャ、仏教やヒンドゥー教における肉食回避、医療的理由としてのアレルギーや疾患、グルテンフリーなどがある。また、ビーガンやベジタリアンなど、動物や環境への配慮から選ばれるライフスタイルもある」と、食の多様性を尊重する重要性を強調した。
具体例として、24年10月に実施したマレーシアの大学との国際交流を挙げた。来日した学生の中には、食事制限のあるイスラム教徒の学生と、制限のない中国系の学生が混在していたことから、全員が同じ食事を囲めるよう工夫したという。「ハラル対応のベジタリアンメニューを用意し、同じテーブルで同じ食事をした。また、不二製油の協力を得て、動物性原料を使わないプラントベースの豚骨風ラーメンも提供した。『おいしい』という声が多く、同じ食事を食べる喜びを共有できた」と振り返った。
こうした経験を踏まえ、大学オリジナル商品の開発では不二製油と協働し、誰もが食べられる動物性原料不使用のプラントベースカレーを商品化した。健康面にも配慮し、減塩設計とした点が特徴だ。「国民食であるカレーを、より多くの人が安心して食べられる形にしたいと考えた。『ミラダシ』を使うことで、動物性原料を使わずとも、うま味やコクを再現できた。学生と教員、不二製油が試作と試食を重ね、和風で満足感のあるカレーに仕上げた」と説明した。
同商品は、動物性原料を一切使用しないプラントベースのレトルトカレーで、塩分量は一般的なレトルトカレー(3.5~4g 程度)より低い1.6g に抑えている。タマネギ、ジャガイモ、ニンジンなどの野菜に加え、大豆ミートのミンチタイプも使用した。大人向けのスパイシーな味わいで、「今後は甘口も考えたい」(重政さん)とする。
〈核の技術ブランド活用した「ミラダシ」、植物性でありながら動物由来のコクやうま味〉
続いて、不二製油風味基材事業部でコーポレートブランディングを担当する平垣内一子氏が登壇し、同社の概要と技術的役割を説明した。

不二製油は植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材を手がけるBtoBの食品素材メーカーで、近年は植物性素材を用いた風味基材事業を新たな成長分野と位置づけている。その中核となる技術ブランドが「MIRACORE(ミラコア)」で、動物性原料を使わずに満足感のある味わいを実現する点が特徴だ。
平垣内氏は、「植物性食品は『味が抜けている』、『物足りない』、『毎日食べたい味ではない』と言われがちで、最終的に『やはり肉が食べたい』となることも多い。植物性だけでも満足感は実現できるのではないか。そこを突き詰めているのが『ミラコア』の取り組みだ」と語った。
「ミラコア」を活用した代表的な商品が「ミラダシ」で、チキン、ビーフ、白湯、カツオ、貝タイプを展開している。いずれも植物性でありながら、動物由来のコクや旨味を感じられる点が特徴だ。今後はエビタイプの投入も予定している。
また、「外食・中食の現場では、ダシから丁寧に調理する余裕がないという声が多い。業務用のカレールーやラーメンスープなど、簡便に使える派生商品も展開している。家庭用調味料の開発も進めている」と説明した。試食では、カレーに加え、ビーフタイプのミラダシを湯で溶かしたものも提供し、「カレーの骨格やコクをどのように支えているかを感じてもらえる」とした。
植物性素材の価値については、「ビーガン向けに限定されるものではない。多様性への対応、人手不足、食資源の持続可能性、さらには輸出促進といった観点でも価値がある。これを『植物性素材によるオールパーパス』として、誰もが食べられる食品として社会に広げたい」と述べた。
大阪公立大学との今後については、「研究開発のフェーズで継続的に協働している案件が複数ある。卒業生も多く在籍しており、今回のカレーに限らず、今後も連携が広がっていく」とした。質疑応答では、同大学院生活科学研究科の竹中重雄教授が、「ミラコア」と「ミラダシ」の技術的なユニークさを評価した。「一般的には成分を分析して味を再現する方法が多いが、ミラコアやミラダシはそうした成分模倣とはアプローチが異なる。植物性素材を組み合わせることで、結果として『その味に感じられる状態』をつくっている点が特徴的だ」と述べた。
また、減塩設計との関係についても、「塩分を1.6g まで下げながら満足感を維持できたのは、『ミラダシ』の寄与が大きい」と説明があった。

〈大豆油糧日報 2025年12月26日付〉







