【日清オイリオグループ】構造改革推進、価格改定の完遂第一に、「Value UpX」で描いた戦略を着実に推進【久野貴久代表取締役社長インタビュー】
――25年を振り返って
25年は長期ビジョン「日清オイリオグループビジョン2030」の戦略に沿った2期目の中期経営計画「Value UpX」の初年度としてスタートした。
製油業界を取り巻くコスト環境としては、ユーティリティコストや物流費の上昇、人手不足の影響などが、コスト上昇の要因となり、24年10月から、そして25年4月から価格改定のお願いへとつながった。加えて25年6月に米国環境保護庁(EPA)が発表したバイオ燃料混合比率の義務量増加を発端に大豆油相場が上昇し、オイルバリューの高止まりが生じている。
エネルギーコスト、物流費、包材・資材費といった諸コストの高騰も継続しており、事業運営におけるコスト圧迫は一層深刻化し、大豆・菜種を原料とした食用油については25年9月からの価格改定を表明した。24年からの価格改定を含め、そのスピードは思い描いた通りとはなっていないが、実勢化に向けた交渉を粘り強く続けている。
国内の物価全般の高騰を背景とした消費者の節約志向や生活防衛意識はかつてないほど強まり、市場環境の冷え込みへとつながっている。特に、家庭用食用油市場については、市場全体が縮小しており、その要因の分析と対策が迫られている。
一方で、「Value UpX」において目指す、「油脂ソリューション創出力の最大化、展開領域・エリア拡大」に向けては、描いた戦略を着実に進めている。チョコレート用油脂については、ISFにおけるチョコレート用油脂の生産能力の増強に向けた投資を着実に進めるとともに、東南アジアでのプレゼンスの拡大に向けて、タイで現地合弁会社を設立した。ファインケミカル事業においては、タイ駐在事務所を開設し、東南アジアへの販促活動を活発化させている。
――油脂・油糧および加工油脂・素材事業の状況は
家庭用は、価格改定への注力に加え、こめ油やヘルシークリアの販売強化を通じた「クッキングオイルの構造改革」、「オリーブオイルの市場回復」、「サプリ的オイルの浸透」に取り組んだ。こめの価格高騰をきっかけに、生活者の節約志向はますます強まる中、特にクッキングオイルは苦戦する結果となった。諦めずに構造改革を推し進めていく。まずは、価格改定の完遂を第一に、流通、生活者の皆さまの理解を得られるまで粘り強く取り組み、並行してクッキングオイルの機能や価値を生活者に理解、納得いただける商品の拡販を行っていく。
オリーブ油については、主要国において25/26クロップは増産の見通しだが、相場は総じて高騰前の水準には戻り切っていない。市場回復に向けた当社の取り組みとして、「BOSCO」をトップブランドとしつつ、風味や価格、調理方法など異なる特徴を活かした提案を強化し、お客さまの幅広いニーズにお応えしていく。こめの高騰で食卓出現頻度が上昇しているパンや麺などとの相性の良さを活かしたメニュー提案も積極的に行う。
サプリ的オイルは、トライアル・ライトユーザーの定着を図るため、ヨーグルトやサラダと言った朝食メニューでの習慣化を提案している。
〈課題踏まえ価値ある製品を適正価格で、営業・生産・物流で連関して資本収益性高める〉
――業務用・加工用について
適正価格での販売に注力している。汎用油の斗缶製品においては計画通りの物量確保ができなかったが、機能による差別化を訴求したフライ油は順調に伸長した。業務用・加工用においても引き続き厳しいコスト環境が想定される中、適正価格での販売の実現が最優先課題だ。
これまで培ってきた油脂技術を駆使した提案でお客さまの課題を解決する提案も行っている。具体的には人手不足や食品の品質維持、おいしさ・健康価値の向上、フードロス対策など、食を取り巻く多様な課題に対して課題解決を行ってきた。
炊飯油による低温でのごはんの品位改善効果は、低温流通される米飯商品などで高く評価いただいている。人手不足が深刻な課題となっている外食業態に対しては、調理の簡便性、品位の維持、調理工程の簡素化をサポートする麺さばき油、素材のオイルなどの商品について卸店と連携して拡販していく。
当社が持つ課題解決情報をより広く届けるために、飲食店向け業務用情報サイト「日清オイリオ業務用お役立ちサイト」のさらなる充実やメルマガ配信やキャンペーン企画などの積極的な活用により、お客さまとの接点を拡げ、新たなお客さまの開拓に繋げていく。
今後さらにニーズが高度化、専門化することが想定される中、油脂原料のみにこだわらず、あらゆる機能素材を最大限活用し、お客さまのニーズに応える機能性油脂・油剤の開発、販売に業務用・加工用の領域で取り組んでいく。開発・生産・販売が一体となった部門横断的な開発体制を構築し、「インキュベーションスクエア」を活用したお客さまとの共創により、迅速に製品を市場に届けることで、連続的なソリューションの実現を目指す。
――26年に向けた抱負を
25年は新中計「Value UpX」を発表し、これまでに構築してきた成長の礎に基づき、当社グループらしい「勝ち筋」をさらに発展させて、イノベーションを生み出す企業体質へと進化すべく取り組んできた。しかしながら、オイルバリューの高騰というかつてないコスト環境の中で、着実な収益を確保し、成長を成し遂げるという面においては課題を残した年でもある。
26年は「Value UpX」2年目の年として、25年で新たに見えてきた課題を踏まえつつ、お客さまのニーズを的確に捉え、価値のある製品を適正価格で提供し続けていく。
国内油脂・油糧事業は、特に家庭用食用油市場が変化していく中で、中長期的な事業戦略・構造改革方針に基づく製品ポートフォリオの見直しが必要になってくる。事業戦略に整合した生産・出荷体制の再構築と生産の瞬発力アップによる在庫の縮減・欠品率の低減、ホワイト物流を前提とした物流ネットワークにおけるコスト構造の明確化など、営業・生産・物流で連関して資本収益性を高めていく。
〈大豆油糧日報 2026年1月6日付〉







