【J-オイルミルズ】昨年特に厳しかったのが油脂コスト、ミールバリュー低下は期初計画の想定以上【春山裕一郎代表取締役社長執行役員CEO】

J-オイルミルズ 春山社長
J-オイルミルズ 春山社長

――25年を振り返って

業界の動向について、市場では一部の家庭用製品において物価高による買い控えが見られ、油脂製品についても販売重量の減少が見られた。
一方で、円安の継続によりインバウンド需要は堅調であり、外食を中心に市場は回復傾向にあると見ている。また、昨今の米の価格高騰の影響もあり、弁当類が売れ、夏の猛暑で揚げ物類は自宅調理よりも総菜購入でまかなう動きなどもあり、中食も堅調であった。

昨年、特に厳しかったのが油脂コストの面である。世界的なバイオ燃料需要の拡大、とりわけ6月に米国EPAからバイオ燃料混合比率を引き上げるという政策案が発表されて以降、オイルバリューの高騰とミールバリューの大幅な低下が起こり、コストに大きなインパクトがあった。これに加え、物流費、エネルギーコスト、人件費といったコストの上昇も大きい。物流費などについては想定していたが、ミールバリューの低下については期初計画の想定以上であり、厳しい状況となっている。

国内では昨年12月に緊急経済対策が発表された。国内経済を活性化するという目的で打ち出されているが、足元では円安も進んでおり、長期金利が上がり、物価高にも影響があると考えている。原料を輸入しているメーカーにとっては予断を許さない状況である。消費が上がる可能性はあるが、コストへの影響があると見ている。

日本では過去30年、バブル崩壊以降、物価が上がらない世界が続いてきたが、そうした環境が大きく変わり始めている。物価が上がることを前提として、事業計画をしっかりと作り、実行していく必要があると改めて考えている。

こうした中で、当社では、佐藤前社長のリーダーシップの下で構造改革や経営基盤の強化が行われてきた。ロシアのウクライナ侵攻やコロナの影響もあり、市場は大きく荒れ、特にコストが厳しい状況であったが、23年以降は業績が回復し、24年度は過去最高となった。

〈事業ポートフォリオ油脂から広げる、価格改定を完遂し業績の回復を〉

――26年に取り組む施策を

今年度はコストが想定以上に大きく動いたため厳しいが、早期に業績を回復させ、その後の成長を実現するための取り組みを推進している。
既存事業、特にコアである油脂を中心とした事業の収益性をどのように上げていくかという点では、価格改定が中心となる。
今年度は3回の価格改定を行うと発表しており、25年5月、9月に続き、26年1月の3回を予定している。生活に欠かせない油脂を、高い品質で安定的に供給するという責務があると考えており、従来とは異なるコストの動きではあるが、お客様との対話を重ね、理解を得ながら価格改定を進めていく。

業務用については、お客様の人手不足という課題は今後も続くと見ており、そうしたニーズに応える製品をどのように提供していくかを重視している。具体的には、長持ち油「長徳」シリーズや調味・調理油の「JOYL PRO」シリーズを打ち出しており、メニュー品質の向上や作業時間の改善に寄与していく。

「長徳」については、昨年6月にリニューアル品を発売した。油の劣化を測る指標の一つである酸価の上昇抑制機能について、汎用品に比べ従来の1割から今回は3割まで高めている。
加えて、「長徳」とITを組み合わせることで劣化度合いを測定し、適正なタイミングでの油の交換を可能にする「フライエコシステム」の確立も進めている。廃油量の削減や交換頻度の抑制につながると考えている。

家庭用については、環境負荷の低減と利便性の両立に応える「スマートグリーンパック」シリーズを引き続き強化していく。健康志向を背景に、こめ油やオリーブオイルといった付加価値の高い商品の取り扱いも進めていく。サプリメントオイルについては、昨年8月にMCTオイルを発売しており、今後も品揃えを拡充していく。

スペシャリティフード事業については、前年度までに構造改革を行ってきた成果として、今年度は増益となった。戦略製品としては、国内ではスターチ分野に取り組み、食感改良や歩留まり改善といった用途で、油と合わせてソリューション提案できる「エクステン」シリーズの拡販を進めていく。

――中長期的な取り組みについて

成長戦略の一環として、事業ポートフォリオを油脂から広げていくことに取り組んでいる。当社の強みは、日本で多くの業務用大手のお客様に油脂製品を使用していただいている点だ。そういった接点を活かし、さまざまなお客様の課題解決につながる提案を進化させていきたい。
当社ではこれを「おいしさデザイン」として、提案活動を強化している。昨年7月には、事業ポートフォリオ高度化プロジェクトを設置し、具体的な検討を進めている。
川下では、油脂、スターチ、マーガリン、ショートニングといった素材の組み合わせによる提案を行っており、今後は他の素材の活用も視野に入れ、これまでリーチできていなかった市場にも新たな提案を広げていきたい。
川上については、ミールといった一次産業向け素材のさらなる付加価値化について取り組んでいく。
海外については、従来通り北米とASEAN をターゲットとしている。北米では、味の素ヘルス・アンド・ニュートリション・ノースアメリカ社との協業体制を確立し、人材も派遣した上で、既存製品の販売網拡大に加え、当社油脂製品などのラインアップ拡充に向けた事業化を進めている。ASEANでは、タイの現地法人をハブとし、日本で行っている「おいしさデザイン」提案を展開していくことを考えている。
昨年12月1日付で組織を変更し、海外戦略部を設け、他社との提携を含めた検討を進めている。

――改めて26年の抱負を

26年は第六期中期経営計画の最終年度に当たる。短期的には価格改定を完遂し、業績の回復を図る。その上で、中長期の取り組みについて、まずは芽を出していく。油脂業界全体が変革期にある中、物流費や人件費といったコストも踏まえながら、生産性向上と適正な価格改定を進めていく。生活者、取引先、株主、投資家の動向を見ながら、対話を重ね、事業の状況について理解してもらえるようにする。

〈大豆油糧日報 2026年1月6日付〉

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創刊:
昭和33年(1958年)1月
発行:
昭和33年(1958年)1月
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