【昭和産業】ボラティリティ下げる舞台装置整う、油脂事業の課題解決で主力3事業安定の見通し【塚越英行代表取締役社長執行役員インタビュー】
――25年を振り返って
25年度までの「中期経営計画23-25」の3年間は、想定していた取り組みは達成できたと感じている。前中計期間は、コロナやロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー問題など想定外の経験をしたので、遅れた3年間を取り戻すべく、やるべきことがある程度順調に進んだ。
最大の課題は、収益のボラティリティを安定化させることだった。製粉事業は比較的安定しているが、油脂事業と糖質事業は原料価格の変動に販売単価がタイムリーに追いつかず、収益に波が出ていた。国内事業の収益を安定させ、そこで得たキャッシュを海外や加工食品を含めてリソースを割いていく土台を固めることがこの「中期経営計画23-25」のテーマでもあった。
油脂事業のボラティリティの高さからの脱却に向けた取り組みは、道半ばながらも進んでいる。具体的には、汎用油への依存から脱却するため、こめ油やコーン油などの高付加価値油、半流動性油脂などの機能性油脂、大豆たん白製品に力を入れている。特にこめ油とコーン油を付加価値化することで利益が取れる商材にし、大豆や菜種で振れる部分を補うことを最終イメージとして進めてきた。完全に仕上がっていないながらも、確実に手は打っている。
コーン油については、国内では原料のコーンジャームは年間を通した安定供給に課題があった。20年にサンエイ糖化をグループ化したことで、原料であるトウモロコシの取扱量が大きく拡大し、糖質事業において業界トップクラスの規模となった。糖質事業と製油事業を併せ持つことで、トウモロコシ加工の過程で発生するコーンジャームを自社グループ内で活用できる点は、当社グループの大きな強みである。コーン油の搾油能力に強みを持つ辻製油との資本業務提携により、安定供給体制を確立した。コーン油の付加価値を訴求していくことで、油脂事業全体のボラティリティを下げていくための舞台装置が整った。
糖質事業は、異性化糖のような汎用品だけではなく、結晶ぶどう糖や粉末水飴、7割のシェアを持つ点滴などに使われる医療用の結晶ぶどう糖など、高付加価値製品を中心に展開している。それまで赤字の期もあったが、この3年間で非常に収益が安定し稼ぎ頭になった。さらに油脂事業の課題を解決できれば国内主力3事業の安定した見通しが立ち、成長分野に力を集中できる。生き残るために、他社にはない唯一無二のビジネスモデルを目指していく。
〈26年度は90年の歴史を次の100年へとつなぐ「新たな挑戦の始まり」の年に〉
――製油事業の実績を
業界、当社ともに明暗が分かれる結果となった。家庭用では物価上昇による消費の冷え込みを受け前年を下回ったが、業務用はインバウンド需要の回復や外食・観光市場の再活性化により、前年を上回る水準で推移している。
一方で、円安の長期化による原材料コストの高止まり、物流費・人件費など経費の上昇が続いている。さらに、世界的な燃料需要の拡大により油脂の需給がひっ迫し、オイルバリューはかつての40%前後から一時50%を超える異常値に達し、現在も50%弱と高値で推移している。
こうした構造的なコスト高が、製油業界全体の収益を大きく圧迫しているため、各社とも採算改善に向けて価格転嫁を急いでいる。当社としても取引先の理解を得ながら、適正な価格形成に取り組んでいる。同時に、機能性や用途特化型など付加価値商品の提案を強化し、新たな価値の創出を進めていく。
――中期経営計画の総括を
23年4月に実施した創業以来初となる抜本的な営業組織改編は中計達成の最大のポイントだ。営業組織改編による提案力強化を図り、業態別、用途別に最適なソリューションを提供し、グループ一体での生産拠点最適化を進め、生産性向上と収益力の底上げを実現した。
今回の組織改編により、営業担当者一人ひとりが、当社グループが持つあらゆる商品やメニュー、情報を駆使し、お客様の潜在的なニーズにワンストップで応えられる体制が整った。
25年度は、組織改編第2弾として、各拠点機能の見直しを行い、本社との機能集約を進めてきた。人手不足解消に寄与するとともに、本社と各拠点の連携強化が進み、グループ全体としての対応力が高まりつつある。
当社グループは、社員一人ひとりが誇りを持って働ける企業風土づくりを重視している。25年度からはグループ全社員向けに社長ブログの発信やグループ会社訪問など、対話を通じたコミュニケーションを活性化し、現場との距離を縮め、社員が安心して挑戦できる環境づくりを進めている。鹿島・神戸・船橋の各工場の生産現場にも定期的に足を運び、安全で活力ある職場づくりに努めている。
――工場訪問やブログの手応えは
メーカーなので、生産現場が元気でないと競争力は発揮できない。他役員の協力もあり時間を捻出し、各工場を3回訪問する計画を立てた。実際に作業ラインに入ってオペレーターと一緒に作業し、25kg袋を担いでミキサーに投入する作業なども体験した。コミュニケーションを取り、作業後に懇親の場を設けることで、自然と一体感が生まれてくる。私自身も現場に足を運び有意義な時間を過ごしており、社員の前向きな様子からも一定の手応えを感じているので、来年も継続していく予定だ。
社長ブログは25年4月から始めた。当社とグループ会社の社員は誰でも見ることができる。週1回は更新しており、工場訪問の様子もブログに掲載している。社員からも気軽に声をかけられることが増えた。
――来年度の重点方針を
26年度は、90年の歴史を次の100年へとつなぐ「新たな挑戦の始まり」の年だ。次の100周年に向けて、一年前から若手を中心にしたプロジェクトで議論を進めてきた。その意見も踏まえ、100周年に向けての会社のありたい姿や理念体系の整理を進めた結果と合わせて、次期中計を検討している最中だ。26年2月に発表する準備を進めている。
国内事業を固めて生み出したキャッシュを将来の成長につながる分野へと活かしていく。その積み重ねを通じて、次の10年に向けた成長の土台を築いていく。
〈大豆油糧日報 2026年1月9日付〉







