【新社長に聞く事業展望】マルサンアイ・稲垣宏之社長 豆乳・豆乳加工品を成長の柱と位置づけ、生産基盤の強化と事業拡大を進める
稲垣宏之氏は昨年12月12日付でマルサンアイ社長に就任した。堺信好会長(前社長)が進めた「選択と集中」を引き継ぎながら、豆乳および豆乳加工品を成長の柱と位置づけ、生産基盤の強化と事業拡大を進めていく。
「豆乳と豆乳加工品をどう成長させていくか。それが私の役割」と強調する。
稲垣氏は飲料部門からキャリアをスタートさせた。入社当初から海外事業に関心を持っていたという。
「就職活動の時に、米国に工場を作ったというのを見て興味を持った。入社時から米国に行きたいと手を挙げていた」。
その希望は早い段階で実現し、1990年から95年まで米国の現地法人に駐在した。
「頼るものがない中でやるのは大変だったが、それが面白かった」と笑顔で振り返る。
帰国後は飲料部門を中心に生産畑を歩み、飲料工場長を経て、みそ工場長、総括工場長を歴任した。
入社当時は祖業のみそ事業が花形で、飲料は目立つ存在ではなかったという。
「私が入社した頃は、まさか豆乳がここまで伸びるとは思っていなかった。今こうして会社の柱になっていることは感慨深い」。
豆乳市場は低迷期も経験したが、健康志向やプラントベースフードへの関心の高まりなどを背景に需要が拡大し、昨年は過去最高の約44.5万kl(日本豆乳協会調べ)に達した。同社の豆乳売上高も順調に拡大している。
一方でみそ事業は長年収益面で課題が続いていた。本社みそ工場の老朽化もあり、みそ事業の大幅縮小に踏み切り、経営資源を豆乳分野へ振り向けた。本社みそ工場は2025年3月に閉鎖し、フラッグシップ商品の「味の饗宴」と「純正こうじみそ」は子会社の玉井味噌へ生産を移管し、原料を国産化して差別化を図った。
〈今後の成長分野として期待を寄せる豆乳パウダー、日本含むグローバル市場で展開する〉
今後の成長分野として期待を寄せるのが、豆乳グルト、豆乳チーズ、豆乳スプレッドなどチルド食品で展開している「食べる豆乳」と、豆乳パウダーだ。
カナダ・オンタリオ州に、豆乳パウダーを製造・販売する合弁会社Alinova Canada 社を24年5月に設立し、稲垣氏が社長に就いた。今春から操業を開始し、日本を含むグローバル市場で展開する。
豆乳パウダーの開発には10年ほど要したという。「豆乳パウダーは水分がなく、豆乳に比べて取り扱いが容易なため、用途が大きく広がることが期待される。パンや菓子など、意外な食品分野からも引き合いをいただいている」。同社では、牛乳の代替にとどまらない大豆の新たな価値創出を目指す。
「牛乳でできることは豆乳でもできると思っている。今後は大豆でしかできないものを作りたい」。
そのためには生産基盤の強化が不可欠だという。「生産畑を歩んできた強みを、生産基盤の強化に生かしていきたい」と力を込める。
【稲垣宏之(いながき・ひろゆき)】
1964年11月6日生まれ。日本大学農獣医学部卒。87年4月マルサンアイ入社、06年9月生産統括部製造部飲料工場長、11年9月同みそ工場長、14年3月同総括工場長、15年9月生産統括部長、19年12月取締役、23年12月常務、25年12月代表取締役社長に就任。大のメカ好きで、機械の構造や造形美に惹かれる。新機能にも興味津々で、最近は「メトロノーム機能付き腕時計が気になっている」とにっこり。
〈大豆油糧日報2026年3月18日付〉







