【みそ専業問屋に聞く】時代ニーズを掴み、オリジナルを提案/田中德兵衞商店

田中德兵衞商店の田中德兵衞社長
田中德兵衞商店の田中德兵衞社長

国内人口が減り、みその消費量も減り、みそメーカーの寡占化も見え隠れする。そのような状況の中で、田中德兵衞商店(埼玉県川口市)はみその専業問屋として、販売の最前線に立つ。時代のニーズを掴み、オリジナルの提案を示すことで、今もなお、業界からの信頼は厚い。そこで、田中德兵衞社長に、これからの課題や販売戦略などについてきいた。

――前期の業績について
売上は前年を若干上回っている。メーカーや取引先の理解を得て、少し値上げをさせていただいたことが要因だと考えられる。売れ行きの良かった商品は、個性のある白みそ系だ。塩分を気にされるお客様も多く、甘いみそにシフトする傾向も見受けられる。高齢化が進むと、辛いものは受け付けなくなってくる。糀具合が高く、塩分濃度が低い、甘口のみそが好まれているようだ。

インバウンド需要については恩恵を感じている。松屋銀座店の店舗では、みそを購入される海外の人が多くいる。そういった場合は、気密性の高い容器を用意して、冷蔵が必要なみそでも、持ち帰っていただけるようにしている。

――みそ業界で、大きな吸収合併が起きているが、現在のみそ業界をどう見ているか 集約化されれば、バイイングパワーは増す。しかし、国内では人口が減少傾向にあることから、みそメーカーにおいても寡占化が進んでいくのではないだろうか。こうした業界の再編で、みそ卸業界については、あまり影響はないと考えている。

卸は、みその提案が最も重要なので、組み合わせなど提案の切り口を変えることで、これまで扱ってきた商品が仮に無くなってもカバーしていくことができる。とはいえ、みその専業問屋としては厳しい状況に変わりはない。

以前は、小さいスーパーが多かった。そのため、みその専業問屋としても多くの引き合いがあり必要とされていた。しかし現在は大型スーパーが多くなってきた影響で、総合商社との取引を優先させる取引先も増えてきた。そうしたことから、みその専業問屋だけでは経営を維持していくことが難しくなってきている。

◆豊洲場外マルシェや直売会を継続的に実施、卸問屋としての認知向上へ

――みその値上げによる業績への影響について
お客様の値上げに対する許容度は上がっているのではないか。今回はコストアップ型の値上げなので、値上げは悪いという風潮はないのではないか。みそメーカーも卸も値上げをしなければやっていけないのなら、お客様にご理解していただいて、値上げしていくしかない。

――関東の味噌生販の活動について
時代を遡ると、銀座でみそ汁の試飲販売を行うなど、広報活動にも力を注いでいた。近年はマスメディアなどを使って発表の場を作り情報を発信する傾向にある。また、メーカーと卸の交流の場として、年2回ほど、総会という形で開催してきた。最近はいろいろな事情が重なり、開催できていないので、今年の秋には開催できるように取り組んでいる最中だ。

――マルシェや直売会など、消費者に向けたコミュニケーションについて
「豊洲場外マルシェ」に2カ月に1回のペースで出店し、手詰めしたみそを販売している。5種類のみそと豊洲限定のセットを中心に販売している。松屋銀座店に店舗があるので、豊洲に訪れたお客様が松屋銀座店の店舗に行かれるといった相乗効果もある。だしを入れていないみそ汁の試飲では、香りとうま味にみなさん驚かれる。こだわりのみそを扱っている卸問屋としての認知度を上げる場として、有効に活用させていただいている。

毎月行っているみその直売会は本社周辺の地域の人を対象に感謝の意味を込めて、できるだけ価格を抑えた商品を販売している。また、川口市役所主催のマルシェにも参加して、認知向上とともに、商品の良さを伝える情報発信の場としても活用している。


――みそ卸問屋の販売戦略について
みそ卸は商品の提案力が重要だと思っている。どこよりも早く新しい商品をお届けする。また地方メーカーの良い商品だけどあまり知られていないものなどを発掘してお届けする。そこにはこれからもこだわりを持ってやっていきたい。

〈大豆油糧日報 4月23日付〉

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昭和33年(1958年)1月
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