三和油脂山口社長が新理事長に選任、家庭用を中心に追い風/日本こめ油工協組合

新理事長に選出された三和油脂の山口與左衛門社長
新理事長に選出された三和油脂の山口與左衛門社長

日本こめ油工業協同組合は5月15日、都内ホテルで第45回通常総会を開催した。任期満了に伴う役員選任では、三和油脂の山口與左衛門社長が第24代理事長に選任され、令和6年度の事業報告、決算報告、令和7年度の事業計画、収支予算など全議案が承認された。


総会終了後の記者会見で山口新理事長は「微力だが全力で務めたい」と抱負を語った。
足元の市場環境については、「供給不足から米の価格が高騰し、家計に影響を与えている。こめ油業界においても、米糠の集荷数量の減少が見られ、今後の集荷動向が不透明な状況となっている」と認識を示した。

一方で、集荷コストの増大、輸入原油価格の上昇など、生産流通コストの増大はあるとしながらも、「家庭用を中心に事業面では追い風が吹いている。2024年には約12万1,000tと近年で最高の供給量となった」と述べた。

その上で、「こめ油そのものの需要が堅調であるにも関わらず、供給面では原料米糠が減少しているなど、総需要量をカバーするには至らない。安定供給の責任を果たすために
国産こめ油の供給不足分を輸入こめ油原油に頼らざるを得ない状況となっている。

需給バランスの調整と、コストを含めた生産面で厳しい局面が続いている。組合員に共通する課題は山積みだが、組合員14社が知恵を出し合って真摯に取り組んでいくことが肝要かと考えている」と語った。

◆オリーブ油の市場規模までこめ油は届く、揚げ物に使う認識強いが生食でもおいしい

質疑にも応えた。こめ油は家庭用市場の金額ベースで約200億円まで拡大しているが、中長期的な見通しについて山口理事長は、「オリーブ油の市場が約400億円ほどだが、その規模までこめ油は届くのではないかと思っている。オリーブ油に匹敵するようなプレミアムオイルとして、日本のオリーブ油のような形で使ってもらえるようになっていきたい」と期待を寄せた。

オリーブ油が高騰したことでこめ油への代替需要もあったが、「脂肪酸組成的にはオリーブ油とこめ油はそれほど変わらず非常に似ている。決定的に違うのは、健康効果が期待できるγ‐オリザノール、ビタミンEは米油に多く、オリーブ油にはほとんど入っていない。オリーブ油はイタリア料理ブームで伸びてきたが、そういう意味ではイタリア料理にこめ油を使ってもいい。日本ではオリーブ油からぜひこめ油に切り替えてもらいたい」と提案した。

また、消費者のこめ油の認識は、酸化安定性がいいことから、揚げ物に使いたいというニーズが高いことに触れた。「揚げ物にこめ油を使うという認識が強いが、生食でもこめ油はおいしいことをもう少しアピールしていきたい」とした。

米糠の集荷における具体的な問題点について、「米糠は3日ほどで処理しないと酸化してしまう問題がある。集荷したらすぐに油を搾らないといけない。去年は猛暑の影響で酸化が非常に高くなり、収量が大きく落ち、安定供給が難しい状況に陥った。今後は改善していかなければいけないが、加工するにはコストがかかるため、大手の精米所直結で米糠を集荷し、すぐに処理するといった対応をせざるを得ない」とした。

政府の備蓄米放出の影響については、「非常に順調に米糠が集荷されている。米不足と言いながらも精米所は増えている状況だ」と印象を語った。

今後の特に注力する方針として、「こめ油市場が増えてくると、海外から安価なこめ油が入ってくる。そういったこめ油と国産こめ油との差別化や、国産こめ油の優位性にどういったものがあるか考えていきたい。食料安全保障のために食料自給率の向上という使命がある。実現していくのはこめ油だ。食用油全体でこめ油はまだ4~5%しかシェアがなく、95%以上が海外から入ってくる原料を使っている。こめ油の認知度を高めて増やしていかなければならない」と強調した。

〈大豆油糧日報 5月19日付〉