ファミリーマート×大塚製薬×自治体がサイネージで熱中症対策、全国1万400店で啓発動画

◆店内サイネージで地域別動画を放映、方言による呼びかけも
ファミリーマートと大塚製薬は、全国47都道府県の自治体と連携し、7月から熱中症対策の啓発活動を開始した。店内のデジタルサイネージ「ファミリーマートビジョン」では、地域ごとの方言やキャラクターを取り入れたオリジナル動画を展開。猛暑が予想される今夏、企業と自治体が一体となって生活者の安全を守る体制を強化する。
都内で7月1日に開かれた記者向け説明会では、ファミリーマート地域代表(首都圏)の水野康之氏、大塚製薬 首都圏第一支店 支店長の伊藤徹也氏、サイネージの運用を担うゲート・ワン取締役COOの速水大剛氏が登壇。取り組み概要と背景について語った。
今年の啓発活動では、全国のファミリーマート約1万400店舗を通じて、地域ごとの言葉を取り入れるなど47都道府県ごとに変えた内容の熱中症対策啓発動画を放映する。東京都内では1434店舗に設置されたサイネージで、7月1日から14日までの11時~17時59分までの間に動画を10分に1回の頻度で再生する。サイネージのない店舗では、売場に都道府県別のショーカードなどを掲示して対応する。
水野氏は「社員や加盟店オーナーにも熱中症対策アンバサダー講座の受講を推奨し、地域の見守り役としての役割も担っていく。地域に根差すコンビニだからこそできる啓発活動を強化していきたい」と語った。ファミリーマートはこれまで2500人以上が同講座を受講しており、全国の店舗で啓発の担い手が広がっている。

動画では、「こまめな水分・塩分補給」「エアコンや日陰の活用」「暑い日は無理をしない」など、基本的な熱中症対策のポイントを15秒でわかりやすく紹介している。
特に注目されるのは、各地域の方言や地元キャラクターを使った呼びかけだ。例えば、大阪府では「こわいんやで熱中症!!」など、地域に寄り添った表現で来店客に自然に訴えかける工夫がなされている。
こうした動画を正確に47都道府県・各エリアの店舗に届けるためには、店舗単位での配信システムの調整や運用体制の整備が必要であり、その調整に苦労したという。
ファミリーマート、大塚製薬、自治体が連携した熱中症対策の取り組みは昨年も実施されていたが、2024年の30都道府県から今回47都道府県へ拡大している。これは、昨年の取り組みが生活者や自治体から高く評価され、健康課題解決に向けた取り組みの賛同を得たことで実現したという。

大塚製薬の伊藤氏は、「当社は全国47都道府県すべての自治体と健康に関する包括連携協定を締結しており、各地域の課題に合った取り組みを進めている。2023年には環境省と熱中症による事故の減少を目的とした連携協定を締結した。熱中症対策の啓発活動は長年取り組んでおり、今回の動画制作や啓発活動も、そうした取り組みや自治体・企業との信頼関係によって実現することができた」と語る。
また、熱中症対策の啓発活動では、鉄道会社や他業種とも連携し、生活者とのさまざまな接点を通じて対策を広げる考えを示した。

サイネージの配信を担うゲート・ワンの速水氏は、「ファミリーマートビジョンは全国で約1万400店舗に設置されており、リテールサイネージとしては国内最大規模。日常の生活動線上で自然に情報が届く設計が強み。公共的なメディアとして、社会課題の解決にも貢献していきたい」と語った。
実際、2025年はすでに熱中症への警戒が強まっている。総務省消防庁の発表によると、2025年5月1日~6月29日の熱中症による救急搬送者数は1万8133人と、前年同期(9812人)の約1.85倍に急増。梅雨明け直後の7月は、年間で最もリスクが高まる時期とされ、注意喚起が強く求められている。
企業と自治体、そしてサイネージというメディアが連携し、地域に根差した形で展開されるこの啓発活動は、暑さと向き合う生活者にとって気付きを得られる材料になりそうだ。