食用加工油脂技術研究会、デジタル活用で人手不足対応する事例講演-全日本マーガ協
〈ロボット活用例、「DELIBOT」は総菜盛り付け全行程の自動化に世界で初めて成功〉
全日本マーガリン協会は6月27日、油脂工業会館で令和7年度総会と第131回食用加工油脂技術研究会を開いた。冒頭開催された総会では、6年度事業報告と、7年度事業計画の全議案が承認された。
食用加工油脂技術研究会で行われた講演のうち、「食のデジタル革命 テクノロジーが変える私たちの食の未来」は、三井物産戦略研究所技術・イノベーション情報部コンシューマーイノベーション室プロジェクトマネージャーの澤野健史氏が説明した。
日本では、少子高齢化や製造業の就業者の減少によって人手不足に陥っている一方で、消費者の食のニーズは多様化している。このような状況下、企業は限られたリソースで広範囲な対応が求められており、デジタル活用が喫緊の課題になっているという。同講演では、IoTやAI、ロボットを活用した事例が紹介された。
AI活用例として、消費者トレンドの把握や、商品の新フレーバーを開発した事例が紹介された。植物性食品の味わいを向上させる事例も紹介された。チーズの味わいの要となるカゼインの機能を忠実に再現する植物性たん白の組み合わせを約30万種からClimax Foods(米国)のAIで予測し、Bel(フランス)で植物代替チーズ開発に活用された。これにより味や栄養価、値ごろな価格の両面を実現したという。
ロボット活用例として、マックスバリュー東海の長泉工場(静岡県)で、総菜盛り付けロボット「DELIBOT」4台を導入した事例が紹介された。「DELIBOT」は、惣菜盛り付けの全行程の自動化に世界で初めて成功したロボットで、一時間あたり1,000食を盛り付けることができる。このロボットを導入することで、作業員を従来の7~8人から3人に削減し、安定稼働を実現した。
〈3-MCPDEとGEの低減に関する取り組み講演、関係業界5団体と農水省が手引作成〉
「食品中の3-MCPDEやGEを取り巻く動向と農林水産省の取組」について、農水省消費・安全局食品安全政策課課長補佐(化学物質管理班担当)の吉田知太郎氏が講演した。
3-MCPD脂肪酸エステル類(3-MCPDE)、グリシドール脂肪酸エステル類(GE)は、油脂の精製工程で、高温で加熱した際に意図せず生成されるもの。これらはそれぞれ、腎毒性や遺伝毒性発がん性が報告されていることから、精製油脂や乳児用調製乳での低減が国際的に推奨されているという。講演内では、農水省の低減の取り組みや、その進捗状況について説明した。
農水省では、2012年以降、3-MCPDEとGEの含有実態調査を実施している。得られた知見はコーデックス委員会に提供し、「精製油及び精製油を用いた食品中の3-MCPDE及びGEの低減のための実施指針」の指針に反映されているという。
さらに、この指針をもとに、関係業界5団体と連名で「食品中の3-MCPDE脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類低減のための手引き」を作成した。
23年に含有実態調査を実施したところ、低減が進捗していたものの、一部の食品については、さらなる低減に努めてほしい旨を依頼したとする。
〈大豆油糧日報 7月7日付〉