J-オイルミルズ 春山社長インタビュー、外部環境変化を活用、小さくても前向きな変化起こす

J-オイルミルズ 春山裕一郎社長
J-オイルミルズ 春山裕一郎社長

J-オイルミルズは7月17日、都内で春山裕一郎社長が就任インタビューを開き、「外部環境の変化を機会と捉え、最大限に活用していきたい」と抱負を語った。

前職では日本の親会社の方針を米国企業で浸透させることに苦労したというが、「前向きな変化を起こしていき、社内で共有することで従業員との一体感が醸成できた」と振り返る。「2025年度は切れ目なく、小さくても前向きな変化を起こすことにこだわる」と力を込めた。前年度は各段階利益で過去最高益を達成して「復活」を遂げた。

「成長」へ舵を切るために、「成長戦略のベースは油脂なので、収益面を最大化する。事業ポートフォリオは『おいしさデザイン』というキーワードで事業の幅を広げていく」などと展望した。

春山社長は、「当社は2020年代に入り厳しい状況が続き、2021年度、2022年度は利益がかなり低下した。一連の構造改革と経営基盤の強化を、スピード感を持って実行し、24年度は過去最高益を達成した中でバトンを引き継いだ」と振り返った。

「先が見えない時代で、変化が加速度的に起こる。気候変動やAIなど、一見食に関係ない技術の発展がマイナスにもプラスにも働く。そういった変化の中で、ビジョンの『Joy for Life‐食で未来によろこびを‐』の実現に取り組んでいく。外部環境の変化はリスクだけでなく、機会と捉え、最大限に活用していきたい」と抱負を述べた。

その上で、「構造改革は終了したので、どう事業を伸ばしていくか、成長戦略の具現化を図っていく。上場企業として株主に還元していく。PBR1倍割れが続いており、投資についても種を撒いていく」と述べた。

◆成長戦略のベース油脂の収益面を最大化、「おいしさデザイン」で事業の幅広げる

自身の経歴についても振り返った。春山社長は1993年に住友化学工業(現住友化学)に入社し、化学と医薬に29年間携わったという。「20代は工場に勤務し、生産管理や管理会計、設備投資の基礎を学びながら、化学の基本的なことも学んだ。

30~40代は本社に勤務した。医薬品は研究開発費が巨額で、1社でできることは限られる。リスク分散の観点でも国外の他社と組んでリスクヘッジする契約交渉を行い、中期計画も策定した。新規事業で3年間ほど有機ELの企画を手掛けていた」と説明した。

一番印象に残っているのは、合併推進室時代の仕事だという。「旧住友製薬と旧大日本製薬が2005年10月に合併した。統合会社がうまくいくような仕掛けをする仕事だった。違う風土の2社の対等合併だったので大変だった」と述べた。

米国投資会社から5事業会社を買収し、その統括会社の設立も担当した。財務・経営企画担当役員として経営メンバーに入ったが、「1,000人ほどの従業員がおり、日本企業が買収し、日本人が乗り込んだ。会社の雰囲気は良くなかったが、日本の方針を伝える必要があった。前向きな変化を起こしていき、社内で共有することで従業員との一体感が醸成できた。そういった経験をJ-オイルミルズ社長としても活かしていきたい」と強調した。

今後の方針として、「成長戦略の具現化と経営基盤の強化に集中して取り組む」と述べた。成長戦略として、「既存事業の収益力の強化」、「事業ポートフォリオの高度化と海外事業展開の加速」、「次世代技術・事業への投資」を掲げている。

「成長戦略のベースは、当社の9割方の売上が油脂なので、収益面を最大化する。事業ポートフォリオの高度化は、油脂とスターチと全く違うところで勝負するのではなく、われわれらしいものを見つけていきたい。『おいしさデザイン』というキーワードで、事業の幅を広げていく策を検討している。海外についても、そういったコンセプトで、J-オイルミルズらしい拡大を目指す」と説明した。

次世代技術・事業への投資については、「10~20年先を考える中で、例えばスタートアップが発酵技術で油を作るようになるかもしれない。芽が出そうなところには投資を行っていく。人がすべてだと考えているので、DXなども最大限使いながら、従業員1,200人のポテンシャルを最大化することに取り組む」とした。

【大豆油糧日報 7月22日付】

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