伊藤園が抹茶・緑茶を値上げ、最大2倍に 就農者減・輸出拡大で需給ひっ迫

2025年秋から価格改定する製品(一例)
2025年秋から価格改定する製品(一例)

◆緑茶は世界的人気に、輸出額は5年連続過去最高

伊藤園は9月1日および10月1日に、一部の緑茶・抹茶製品の価格改定を行う。7月31日に発表した。

9月1日には、抹茶の「寿榮の昔(じゅえいのむかし)30g」は、2800円が4200円(税別、改定率50%)、「吟風の白(ぎんぷうのしろ) 30g」は1,900円が3,000円(税別、改定率57.9%)となる。これら抹茶製品は計19品(お点前用・お茶会用)を対象に、現行価格体系から希望小売価格を48.8%~100%引き上げる。

10月1日には、緑茶製品の「機能性 一番摘みのお~いお茶1200」(オープン価格、改定率5%)や、「ワンポット緑茶ティーバッグ34袋」(420円→450円、改定率7.1%)など、緑茶リーフ製品は、計32品(パック茶・ティーバッグ茶・顆粒茶・抹茶)を対象に、現行価格体系から希望小売価格を3.3%~50%引き上げる。

伊藤園によれば、エネルギー費や物流費、人件費など社会・業界全体のコスト上昇が継続している中、茶農業では就農者の高齢化や後継者不足などにより栽培面積や生産量が減少している状況だという。

一方で、緑茶・抹茶製品の世界的需要は拡大の一途をたどっており、2024年の緑茶の輸出額は前年比24.6%増の364億円となり、5年連続で増加している。その中でけん引しているのが健康ブームで注目される抹茶だ。

また、国内においてはインバウンド需要の高まりにより、需給バランスの乱れが生じている。この結果、茶業界全体で原料不足による価格高騰が続いているという。

伊藤園は、緑茶・抹茶製品の品質の向上と安定的な供給に向けて、茶産地育成事業をはじめとした茶原料の安定調達や生産技術の向上、輸送等におけるオペレーションの効率化といった様々な企業努力を行ってきた。

だが、企業努力だけでは安定的な供給を維持することが困難な状況となり、緑茶・抹茶製品の希望小売価格および出荷価格の改定に踏み切った。

伊藤園は、「今後も当社は、経営理念の“お客様第一主義”のもと、茶農業に深く関わる企業として安心・安全で高品質な茶原料の安定調達と国内農業の課題解決の両立に対して従来以上の企業努力を継続しつつ、お客様に安定的な供給と納得していただける価値や品質を伴った製品の開発・供給に努めてまいります」としている。

最近の茶市場の茶価は、伊藤園によれば、緑茶で2倍以上、抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)は約3倍になる傾向という。今回、緑茶飲料に加え、リーフ製品でもシェアトップの伊藤園が価格改定を行うことで、茶業界全体でも同様の動きが波及する可能性がある。

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昭和26年(1951年)3月1日
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