【新会長インタビュー】全国納豆協同組合連合会・長谷川健太郎会長 輸出促進と販売価格の適正化に注力、今年も米国出展検討、gと同価格で売れるように

「目的を達成するまで行動を辞めない」。そう力強く決意を述べたのは、5月に開かれた第71回通常総会で新会長に就任した長谷川健太郎会長(日東食品社長)だ。長谷川会長は就任以前から、「納豆連 HACCP」の作成に協力するなど、業界のために尽力してきた人物だ。本紙では、新会長として注力していきたいことや、輸出における課題などについて話を聞いた。
――新会長として取り組んでいきたいことは
納豆市場は伸長しているが、2020年以降、人口は減少傾向に転じている。20年を適正値と仮定した場合、納豆の製造施設が人口に対して多すぎるとも捉えられる。製造施設を減らさないというのなら、市場実績を維持しないとならない。そうなると、力を入れるべきなのは輸出だ。これが納豆連の課題だ。国内の消費だけでは足りない。
納豆連としても、輸出に関する取り組みを、国の補助を受けながらやっている。23年11月には、中国へ視察に行った。同年、米国の展示会も視察している。24年には、米国の展示会に出展した。25年も米国で出展を検討している。納豆の消費量が減ってから慌てるのではなく、今のうちから10年、20年後に向けて準備している。
もうひとつ注力したいことは、納豆の販売価格の適正化だ。消費者は納豆に安さを求めているが、それでは納豆メーカーは商売を続けていけない。原材料費だけでなく、人件費や運送費も上昇している。
約30年前、納豆は50g×3パックで128~138円ほどで販売しており、特売時で100円ほどだった。しかし今では毎日88円で納豆が販売されている。現在の価格に慣れている人からすると、30年前の価格は「高い」と感じるだろうが、私からすれば、138円は昔の販売価格に戻っただけに過ぎない。計150gの納豆を150円で販売するといった感じで、gと同じ価格でも売れるようになってほしい。
納豆を安く販売し続ければ、そもそも納豆屋自体がなくなってしまうかもしれない。年商3億円未満の納豆メーカーが全体の75%を占めるという。儲かるか分からない会社を後継者が継ぐだろうか。事業そのものが魅力的でないと、納豆を製造する人はいなくなるだろう。少しでも納豆メーカーが生き残れるようにしたい。
〈輸出は環境面や食文化への配慮が課題に〉
――輸出の課題は
納豆の容器にはPSP(発泡スチロール)容器が使われている。特にヨーロッパは環境面に厳しい。環境面に配慮することが課題になってくる(輸出先では発泡スチロール製の食品容器に対して規制がかけられているケースが多い)。また、今は大丈夫でも、今後厳しくなる方向になると思う。
他方で、イスラム教徒の人は豚肉やアルコールなどを口にできない。その国の事情に合わせて納豆を作る必要がある。
日本では納豆の食習慣が根付いており、納豆ご飯にして食べられることが多いが、他国でも同じ食べ方をされるとは限らない。さまざまな食べ方があることを受け入れないとならない。まずは輸出の足がかりを作るのが目標だ。
――農水省が「適正な価格形成に関する協議会」を実施しているが
納豆連では、納豆の加工製造にかかる細かい内訳に関して情報提供した。納豆の1日あたりの生産量は発酵室の数で決まる。利益率を求めると忙しくなり、労多くして功少なしといった状況に陥りがちだ。当社でも、段階的に価格改定することで利益率がアップした。
――抱負をお願いします
納豆メーカーを元気にするために色々とやっていきたい。以前、納豆連に加入するメリットを尋ねられたことがある。納豆メーカーが集まることで、1社だけでは難しいことでも何かを成し遂げられるかもしれないということがメリットだ。私は目的を達成するまで行動を辞めない。
〈大豆油糧日報2025年10月3日付〉