日油協、10月会員集会/市場活性化へPR強化、油糧協と原料の安定調達の取り組み注力
日本植物油協会(日油協)は21日、大阪市内のホテルで10月度会員集会を開いた。続く記者会見では、佐藤達也会長(J-オイルミルズ会長)が、就任から約1年半を振り返りつつ、業界を取り巻く課題や対応策、取り組みの進捗状況について説明した。佐藤会長はまず、植物油を取り巻くコスト環境に触れ、「2021~22年の記録的なコスト高と比べると低下しているが、依然として高止まりしている」と指摘。その対応として「適切な価格転嫁だけでなく、各社が価値を高める取り組みを進め、市場を活性化することが重要だ。業界としてもPR強化が求められる」と述べた。さらに、地政学的リスクや為替の円安傾向、輸入品価格の上昇、人件費の増加といったコスト要因がサプライチェーン全体に及んでいるとし、「特にバイオ燃料需要の高まりを背景に、24年の植物油価格は世界的に確実な上昇傾向にある。こうした厳しい環境は今後も続く」との見方を示した。
対応策として協会では、「産業」、「国際」、「技術」、「広報」、「表示」、「環境」の6部会を設置しており、「会員各社の積極的な参加を得ながら、持続可能な事業環境の構築に向けた取り組みを進めていく」と強調した。取り組みの成果として、佐藤会長は3点を挙げた。
1つ目は、昨年4月の「食料・農業・農村基本計画」改正を受けて制定された「食料供給困難事態対策法」と、今年4月に閣議決定された新たな基本計画について。これに油脂類が記載された点を挙げ、「国の基本方針決定の過程で、協会として意見を表明してきた結果」と評価し、食料安全保障を確保する上で、重要な役割を担う意義を強調した。
2つ目は、物流2024年問題への対応だ。油脂製品は重量物が多く現場の負荷が大きいことから、協会では法改正前から行政に対して実情を説明してきたという。その結果、「油脂のバルク・ローリー物流では『2時間ルール』が適用除外となるなど、多くの意見が反映された」と報告した。現在は正副会長会社3社を中心に「油脂物流未来推進会議」を設け、業務用製品の物流効率化に向けた具体的な検討を進めている。
3つ目は、原料の安定調達に向けた取り組み。米国・カナダ・豪州との2国間協議や意見交換に注力しており、昨年は新型コロナで中断していた豪州との菜種情報交換会も再開した。今年も油糧輸出入協議会と連携しながら取り組みを続けるとし、「会員各社の安定調達環境の構築に努めたい」と述べた。11月には日米など3件の国際会議を予定しているという。
〈植物油の安定供給維持の重要性強調、関西の勢い元気に、関西発のフォローの風への期待〉
9月に発表された日米関税措置に関する共同声明では、大豆やトウモロコシ、バイオエタール、肥料など米国産品の追加購入(年間約1兆2,000億円規模)が盛り込まれた。これについては、「個別品目ごとの対応は依然として不透明」と述べた。
そのほか、「カーボンニュートラルへの対応や、非食用需要との競合も今後の重要課題」と述べ、長期的な視点からの持続可能な事業運営の必要性も強調した。
その後の会員懇親会では、佐藤会長があいさつし、「今年の植物油価格は再び世界的な上昇傾向にあり、主要生産国のバイオ燃料政策による堅調な需要が背景にある。米国では大豆ミールの生産が増加する一方、飼料需要が伸びず輸出に回ることで、ミールバリューの低下が業界に影響を与えている」と述べ、植物油の安定供給維持の重要性を強調した。
続いて久野貴久副会長(日清オイリオグループ社長)が、「大阪・関西万博や阪神タイガースのリーグ優勝、ノーベル賞の受賞などで関西が盛り上がっている。こうした勢いを業界の元気につなげたい」と乾杯の発声を行った。
中締めでは、大森達司不二製油社長が、同社が大阪・関西万博で実施したイベントを紹介しつつ、関西発のフォローの風への期待を示した。
〈大豆油糧日報 2025年10月24日付〉







